何か、懐かしい夢を見ている気がする。
子供の頃の夢。
幼く、何も知らなく、なにより自分に正直にいられた頃の夢。
自分の心は脆く、弱い。
そう自覚しているからこそ、心に覚悟と言う柱を立てねば支えることが出来ない。
さあ、早くこの夢から覚めよう。
これ以上この夢を見ていると後悔で心が砕けそうになるから。
夢は幻、夢は幻想、そして夢はすぐに忘れる。
最後の一つだけはいいことだと思う。
夢は次々と場面を変える、夢の中の子供は成長し、やがて少年の夢へと変わった。
再生されるはおそらく今までの人生で最大の選択を迫られた場面。

『さあ、流、選べ。この家で平和に暮らすか、それとも戦火へ己の身を投げ入れ、その手を血に染めることになることをわかりながら本を集める道かを』

『俺は……』

なぜ俺はあのときどうして戦いの日々へ繋がる選択をしたのだろうか。
思い出せない、そのとき俺は何かを思い、何かを考え、そして何かを覚悟してその選択をしたはずだ。
わからない、なにか、なにか大きな覚悟が、思いがあったはずだ。
この手が血に染まり、汚れるごとに心は色あせ、焦燥していく。
そのなかで失われた思いの中にその覚悟があったはずだ
わからない、思い出せない、だがこれだけは言える。
俺は必ずあれを成し遂げる、そう心に決めたのだから。
もうすぐ夢が終わる、目覚めがやってくる。










ネギま+α 第四話










目が覚めると視界が何かもふもふしたものに覆われていた。
数秒掛かってそれが毛布だと気づく。
毛布を押しのけ、起き上がる。
ふぁっとあくびをし、強張った身体をこきこきと鳴らした。
そういやなにか懐かしい夢を見た気がするな、思い出せないけど。
少しの間、ボーっとして、もう一度身体をほぐしたところで異変に気づくここはどこだ。
寝ぼけているせいか、昨日何をしたかさえ思い出せなく、寝起き特有の頭の中に霞がかかったようなボーっとした感触だけが強く頭に残った。
まあ、そのうち思い出すだろう、なんてことを考えているときに隣でごそごそと何かが動く音がした。
見てみるとベットが備え付けてあり、人一人分の布団の膨らみがベットの上に乗っかっている。
目蓋が下りてこないよう気合を入れて眠気に抵抗をしながら思考を巡らした。
俺と一緒に寝床と共にする人物は師匠しかいない、だからこの人物は師匠なはずだ。
そう確信して腕時計で時間を確認した。
午前8時、そろそろ仕事に出る時間だ、急がなければ依頼主に会う事が出来ないだろう。
だが師匠はとことんわがままで俺を困らし、しかも困っている俺の姿を見て楽しむのが大好きだという、はっきり言って大迷惑な性格の持ち主である。
一瞬、起こさないという選択肢が頭の中に浮かんだが却下し、とりあえず仕事に行かせたほうがいい、数秒の思考の結果、そう判断した。

「師匠、起きてください。遅刻しますよ」

数回揺するが、まるで効果はない。
もう一度揺する。
変化なし。

「さっさと起きてください、もう起こしませんよ」

変化なし。

「これが最後通告です。早く起きないと後悔しますよ」

微動だにせず。

「ったく、仕方ないですね」

がしっと、布団の端を掴み、腕に力を入れ息を深く吸って。

「さっさと起きろ、このぐーたらがぁー」

少し怒りを入り混じらせた声を出しながら布団をスッパーンと豪快に吹き飛ばす。
せっかくの清々しい朝が台無しだな、と思いながら布団の主を確認した。
そしてすぐさま思った。いったいなんだこの状況は、と。
眼を擦ってみた。これは幻覚ではないのかと思って。
恐る恐る目を開く、やはり彼女はそこにいた。
彼女はおそらく小学生ぐらいだろうと思われる体型をしていた。
透き通るようにきれいな金髪をしており、頬がぷにぷにしてそうで可愛らしい。
頬が桜色に染まっており、犬の人形をぎゅっと抱きしめながらスース―、と寝息を立てている姿はなんとも言えない可愛らしさがあった。
数秒間彼女を凝視する、すると一つの結論に達した。

――この女の子は誰だ。

そこまで思考を巡らした時、頭の中にわかだまっていた霞が急に晴れた。
パッチリと目が覚め、昨日の出来事を次々と思い出せた。
そこでまた一つある結論に思い当たる。

――なんでこんな所にいるんだ。

昨日、俺は移動中に意識を失い、倒れたはずである。
なのになぜこんな所にいるのか。
それとも意識を失う直前に見たあのロボが助けてくれたのだろうか。
それにこの女の子はどこかで見た記憶がある。実際に会ったことはないが。
だが何かのリストで彼女の顔写真を見た記憶があるのだ。
思い出せない。わからない。情報がまったくもって足りていない。新しい情報を手に入れることが真実へと近づく道だろう。
布団を引っぺがしてしまったせいか、女の子はもぞもぞと体を動かし、ゆっくりと体を起こした。
まだ少し眠いのか、目をごしごしと擦りながらボーっとしている。
やばい見つかる、急いで身を隠そうとするが遅い。

「茶々丸か…。もう少し優しく起こせないのか」

ベッド前の虚空に向かって話しかけた。
そのまま一言、二言虚空に話しかけた後、ゆっくりと目蓋が落ち、首が力を失ったかのように下にがくっと降りてまたスースー、と言う規則正しい呼吸音が聞こえていた。

――寝ぼけていたのか、た、助かった……。

額に流れる油汗を拭って、大きく深呼吸をした。

「さて、これからどうするかな」

ぽつりと呟き、今後の活動について考え始めたところで。

「ほぉ、これから何をおっぱじめるつもりだったんだ、小僧」

怒気をはらんだ声が聞こえてきた。

「まさか私の寝込みを襲う奴がいるとは思いもしなかったぞ。貴様はいわゆる変態という奴か?」

「違う、俺は気がついたらここにいて何がなんだかわからなくて」

「問答無用、小僧は眠ってろ。何、目覚めた頃には警察に着いてるだろうから大した事はない」

「ぜんぜん大したことじゃないですよっ。誤解です、ちょっとその手を下ろしてって、うわっ」

彼女から繰り出された右ストレートは寸分違わず俺の鳩尾を狙って直進する。
そのまま彼女の拳は目標に命中した、かのように見えた。

「ふん、所詮ただの人間などこれで終わりだ」

彼女が拳を引く。
おそらく気絶したと思ったのだろう。
だが待てども待てども俺が気を失って倒れる様子はない。
僅かに体をずらして急所を外しておいたのだ。

「くっ、効かないだと。貴様もしやただの一般人ではないな」

そう言うと何かの液体が入った試験管と小瓶を取り出す。
あれは魔法薬。もしかしてこいつはただの一般人じゃないのか。
念のため、いつでも逃げられるよう戦闘態勢と取っておく。

「俺は戦う気なんてこれっぽっちもないですから」

「人の家に不法侵入した奴が何をほざく」

何を言っても通用しそうにない。
どちらかが動けば戦闘が始まる。
そんななかで。

「おはようございます、マスター。朝食の準備が出来ました」

ガチャっとドアを開けて部屋に入って来たのは昨日最後に見たあのロボだった。
ロボは戦闘開始数秒前、といった状態になっている部屋の様子を確認したあと。

「すいませんマスター。この方を家に入れたのは私です」

ああ、助かった。
安心し、同時に金髪の少女に評価をつけておく。
この女の子は気にくわないと






「つまり茶々丸は道で倒れていた奴を治療のため拾ったんだな」

約三度目になるエヴァさんの質問。
ちなみに茶々丸さんがさっきの状況をうまく押さえてくれ、なんと朝食まで頂き、そのとき軽く自己紹介を済ましてある。
また茶々丸さんが作った朝食はとてもおいしかったと言っておこう。
小さい女の子がエヴァさんと言ってロボの女の人は茶々丸さんと言うそうだ。
身長は茶々丸さんのほうがやや高い。当然だがエヴァさんよりは高かった。
いや、ロボの女の人はおかしいか、女性型ロボが正しいのか、混乱するな。

「はいそうです。藤井さんは腕に軽傷、及び激しく体力を消耗している状態のようだったのでこのまま放置するのは危険だと判断し、ここに運びました」

「なるほどな。捨て猫を拾っているのは知っていたが、まさか人間まで拾うとはな。まあ、咎めはしないがほどほどにしておけよ」

「はい、すいませんでしたマスター。いかなる罰も覚悟しております」

「気にするな。むしろこれは幸運だ。茶々丸に感謝しなければな。ところで小僧」

「何ですか、エヴァさん。俺の身の潔白は証明されたと思いますが」

「ちょっと訊きたいことがあってな。小僧、道で倒れていたといっていたな。貴様、学園の生徒ではないだろ。この一般人が入り込めない平和な学園で倒れるとはいったい何をしていたのかと言うことをな」

「そ、それは……」

いい質問だ、言えない。仕事に関わることを言うわけにはいかない。

「質問の仕方が悪かったか? なら言い直そう。昨日の六時頃、学園内に侵入してきた奴がいる。それはお前かと聞いているんだ」

またもやこちらの訊かれたくないところをダイレクトに攻めてくる。
恐ろしく口がうまい。まるでかなり長い年月を生きて知恵を溜めた者との駆け引きのようだ。

「いえ、俺は用事があってここに来たのでそんなことは知りませんが」

「ほお、用事か。そういえば貴様見たところ中学生ぐらいに見えるが学校には通っていないのか」

「一四歳だけど、学校はちょっとした都合で通ってな…じゃなくてここに転校してきたんです。うん、そうそう」

即興で口実を作ったが、かなり無理のある説明な気がする。
一部は嘘ではないがエヴァさんに通用する気がしない。

「ならさっき私が試験管を取り出したときお前の反応が過敏だったと思ったんだが。まさかこの液体がなんだか知っていたんじゃないのか?」

「あのマスター……」

「なんだ、今は忙しいあとにしろ」

「さあ、さっさと答えたらどうだ。それとも答えられないのか」

「あの、マスター。そろそろ登校しないと時間に間に合わないのですが」

「なんだとくそっ、忌々しい戒めだ。しかしこれも今日来る坊やによってじきに終わる。楽しみだ」

エヴァさんは俺をびしっと指差し、長い金髪を振り上げる。

「というわけだ小僧。私はこれから学校に行かなければならない。貴様が何をしていたかは見逃しておいてやる。ただし、今回だけだ。もし今後見かけるようなことがあったら容赦はしない、わかったな」

「はあ……」

「わかったらさっさと出て行け。ここは私の家だぞ」

ギラリと彼女の眼光が強まる。
これ以上質問攻めはこちらも勘弁だったので急いで外に出ることにした。





外に出て家を見てみると中々上品なデザインをされたログハウスだった。
荷物でも取ってきたのだろう、遅れて二人が出てくる。
エヴァさんはまだ俺が残っていることに少々驚いた顔をしただが、すぐに落ち着き。

「なんだまだ残っていたのか。また質問攻めされたいのか」

などと言いながら微笑する。
その光景はなっとくしたくなかったが、なんとも美しく、また可愛らしかった。

「いえ、俺も忙しいのでさっさと行きたいのはやまやまですが、やるべきことはきっちりやらねばならないのでね」

茶々丸さんに目を向ける。
倒れていた俺を助けてくれた彼女に何としてもお礼を言いたかった。
一宿一飯の恩義を何も言わないまま去ったらただの恩知らずだ。

「茶々丸さん」

「はい、なんでしょうか」

「助けてくれてありがとうございました。お礼をしたいところですが何も出来なくてすいません。あとエヴァさん」

「なんだ小僧」

「正直言って殴られたし、俺も落ち度もあっただろうがやっぱりあんたのほうが悪いと思う。けどま一応、家の主だから言っとくありがとう」

「それは宣戦布告と受け取っていいのか」

怒りに声を震わせながら拳をポキポキと鳴らしている。
うわ、けっこう怖い。

「短時間しか会話してないのにずいぶんと仲が良くなりましたね。このようなことは初めてです」

「「そんなわけあるはずない」」

エヴァさんと同時に言ってしまう。
ちょっと自己嫌悪した。

「引き止めてしまってすいません。それでは俺はそろそろ失礼します」

「ふん、さっさと行け。もう来るな」

「やっぱり仲が良いですね」

「怒るぞ、茶々丸」

こうしてロボと少女のところを去った。
目的地は依頼主がいる学園長室。
すぐさま行きたいところだが、まずは薬を飲んだり、着替えたりしなければならない。
適当に人気のないところに移動してまずはいつもやっている朝の訓練を始めた。
そして一応周りを見渡し、気配を探る。近くには誰もいないようだ。
地面に正座で座り、精神を集中させる。
元々、ルーンの基本はイメージだ。
ルーンはその文字ひとつひとつにいくつもの意味がある。
例えばルーンのひとつ”ISA”では氷、静止、冬、静寂、遅延などほかにも様々な意味があるのだ。
戦闘中ではそのなかの一つの意味を瞬時に強いイメージを練り上げて文字へと書き表し、効果を発揮させなければならないのだ。
厳密に言えばルーンには4つの使い方がある。
1、自分の願いをストレートに表しているルーンを使う。
2、古代語で書き表す。
3、ルーンをアルファベットのように使って、英語などで書き表す。
4、複数のルーンを組み合わせて、オリジナルのシンボルを作る。
この4つがそうだ。
普段使っているのが基本技の1に当たり、2、3、4はその応用技に当たる。
ちなみに昨日使った結界は4に該当する。
頭に一つのイメージを描いた。
二つのスイッチ、すなわち気と魔力。その二つのスイッチを同時に押すイメージ。
スイッチの上に指を置く、スイッチを押すのは同時、コンマ数秒でも遅れたら成功はしない。
すなわち気と魔力の同調。まだ俺はこれに成功したことがない。
スイッチを押す。身体に気と魔力が同時に発生した。
だが一瞬で反発しあい、互いに消滅してしまう。

「くっ、やっぱ無理か」

師匠はこれが出来たら一人前ぐらいには認めてやると言っていたが、いつになったら出来るようになるのやら。
切りのいい所で訓練を止め、クロードXを取り出したところで不思議な出会いを果たしたあの二人のことを思い出した。
相手を挑発するようなことをしてしまったが、会話をしているうちに俺はエヴァさんが師匠と同じタイプだということに気づいたのだ。
あの人が答えられないところをわかりながら質問してくるあのやり口。
気がついたらいつも師匠にやっているように返してしまっていた。
我ながら少々大人気ない。少し反省しながら薬を飲んだ。
強い眩暈と共に体に違和感が生じ、転換は終了した。
てきぱきと学園の制服に着替え、気づく。

「そういや、今日から女として暮らすことになるんだな」

いつも仕事で潜入するときのような、短期間のものではない。
一年間ずっと毎日やることになるのだ。

「となると思考も一応は女の子の考え方にしないといけないんだよな」

思考、自分の心を読まれることなんてないと思うが、一年間もやるのだ。慣れておいた方がいいだろう。 決まればさっそく活動を開始する。
自分の呼び方は私、そして思考は今までの任務の経験を生かし、新たに藤井灯と言う存在を作り上げる。
藤井流としての思考をカット、これまでの経験を元に女としての自分を作りだし、今、ここに藤井流と言う存在は消え、代わりに藤井灯と言う存在が表れる。

「私、ですか。なんだか変な感じがしますね」

試しに呟いてみる。
振る舞いに不自然がないか確かめたいが生憎、確かめてくれる人がいない。
あとで桜咲さんか龍宮さんに聞いておいたほうがいいだろう。
準備が完了したので学園長まで移動を開始した。







流と別れた後、二人はいつものように登校していた。
ほかの人からは一見、何の変哲のない風景に見える。
だが茶々丸は今までに類を見ないほどマスターの機嫌が悪くなっているのに気がついていた。

「あの、マスター」

「なんだ」

「機嫌がよくないようですが、どうかしましたか?」

「機嫌だと、理由を上げるなら一つしかないだろ」

機嫌が悪い理由。
それを見つけるべく、彼女は今日の出来事のデータを頭の中で再現し始めた。
高速演算による結果は。

「私が見る限りではなにか機嫌が悪くなるようなことはなかったと思いますが」

「ないだと。あー、もういい、ヒントを与えるのも面倒だ、私が言う。あの忌々しい小僧のせいだ」

「あの方とはずいぶん仲がよかったように見えたと記憶しておりましたが」

「あんな奴と仲が良いはずあるか」

「そうですか。藤井さんに質問攻めをしているときはずいぶんと楽しそうに見えましたが」

「あれは言われたくない質問をされてじわじわと追い詰められていく姿が中々面白かったんだ」

うんそうだった、と言う感じで何度か頷いた
その言葉をデータとしてマスターの情報に加える。
ミスがないように再度チェック。そこで一つの結果が該当した。
この結果が外れていないか確認するため、また質問する。

「マスター、ということは」

「どうした」

「マスターは人をじわじわいたぶるのが好きなのでしょうか」

「まあ、あながちはずれてはいな……ん?」

マスターの動きが急に鈍くなる。
ゆっくりとこちらを向いたマスターの顔はなぜかリンゴのように赤くなっていた。

「どうしたのですかマスター。熱でもあるのでは?」

「ご……」

「ご?」

「誤解を招くいいかたをするなぁー」

ぴちんと、デコピンをされた。
人の心とは複雑なものですね。
改めてそのことを痛感したのだった。








「さて、どうしましょうか」

目の前には学園長室に入るドアがある。
いますぐ入りたいところだが、今それをやるのは少しためらわれた。
なぜなら。

「大体子どもが先生なんておかしいじゃないですか」

なにか言い争いをしているのが聞こえてくるのだ。
しょうがない、邪魔になるかもしれないけど。
決心を固め、ドアを開けようとした時。

「あら、そこでなにしているの?」

背後からの声、振り返るとここの職員と思われる女性がいた。
眼鏡をかけており、髪が腰まで伸びている。
大人の女性と言ったらいいのだろうか、全てを優しく受け止めてくれるような優しい感じがした。
そして何よりも目を引くのはその大きな胸。
何をどうしたらこんなに大きくなるのだろうかと言いたくなるほど大きいのである。

「あの私、今日ここに転校する予定なんですけど、なんだか学園長室で話しているようで」

「転校生、そうあなただったの。私は指導教員のしずなです。よろしくね」

「藤井灯です。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくね。学園長だったら、もう少しすると私を呼ぶと思いますからそのとき一緒に行きましょうか」

「しずな君、ちょっと来てくれんか」

部屋の中から聞こえてくる声、さっそく呼ばれたようだ。

「さっそくね。じゃあ、行きましょうか」

「あ、はい。緊張します」

学園長には正体がばれているとはいえ、ほかの人には私の振舞い方が不自然に思われないよう気をつけねばならない。
これはここで生活する上での最初の試練と言っていいだろう。

「ふふ、これはまだ序の口よ。あとの方でクラスに自己紹介しなきゃいけないんだから」

大勢の人がこちらに注目する。
その場面で不自然に思われなければ学園生活で支障はないと思われる。
あとはばれないよう常に気を配ればいいだけだ。

「失礼します」

ガチャリ、と言う音と共にドアが開く。
しずな先生が先に入り、私がそれにつづいた。
そこで目に入ったのは。

「あら、ごめんなさい」

しずな先生の胸に顔を突っ込んでいる子供だった。
身長は140センチぐらいが妥当だろう。
あの幼い顔つきからして年はおそらく9か10といったところ。
しかしその幼さに似合わず感じられるのは膨大な魔力。
巧妙に隠してはいるが、熟練の戦士や魔法使いならそれを感じることが出来るだろう。
この人がおそらくは学園長が言っていた魔法先生。

――こんなに若いのか、予想外だ。

そう思わずにはいられなかった。
しかしこの若さで魔法先生ということは相当の才能と実力、そして隠れた努力があるはず。
その年でよくここまで上り詰めたものだと思う。

「灯ちゃんかの、ここにいるのが君のクラスの担任になるネギ・スプリングフィールド先生じゃ。そしてうちの孫娘の近衛木乃香、その隣にいるのが神楽坂明日菜ちゃんじゃ」

「藤井灯です。中途半端な季節に来てしまいましたが、これからよろしくお願いします」

ぺこりとお辞儀をする。

「こちらこそよろしゅうな」

「こっちこそよろしくね」

「これからよろしくお願いします」

返ってくる三つの返事。
不審がられている様子はない。とりあえず私が見ていては。
とりあえず最初の試練は無事突破したようだった。





あとがき

やっとこら更新。
とりあえず出来るだけ早く次を更新したいと思います。
それでは失礼致します。

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