魔法先生ネギま!「――――“この世界に祝福を”」

 

第11時間目 〜闇の福音〜

身体測定も終わり、アスナ達は平常の授業に戻った。
別段いつもと変わりなく授業はすすんでいるように見えたが、アスナや木乃香はネギが若干落ち着いていないのに気がついていた。

「(ねぇ、なんかネギの奴あわててない?)」

「(そうやね、案外さっき覗いてたり……?)」

「あのガキがそんな度胸あるわけないでしょう!!?」

といきり立つアスナ。突然の奇行に思わず黙り込むクラス。嫌な沈黙があたりを包んだ。

「えっと、アスナさん? ガキっていうのは……?」

「ちょっと、アスナさん!? 授業中ですわよ!」

「ご、ごめんネギ……」

明らかに自分が悪いので珍しく素直に謝るアスナ。木乃香は「あちゃ〜」とでもいいたげに空を仰いでいる。
巧妙に隠しているが口元がにやけているのが丸分かりである。とめろや。

「えっと、じゃあ続きいきます。ここのwhatの役割ですが……」

と、ちょうどチャイムの音が鳴る。今日のお勤め終了というわけである。

「あ、じゃあ今日はここまでです! 明日ここのおさらいからはじめます! じゃ!」

この台詞がクラスの人間の脳に伝わるころにはネギはすでに教室から消えていた。いいのか先生。

「はや!」

「ねぎ君あんなあわててどうしたの?」

「アスナ〜? なんかあった?」

「まさかアスナなんかしたんじゃ……」

「ちょっと! なんで私が悪いかのように言われるのよ!」

ギャーギャー言いながら帰り支度をそそくさとはじめるクラス一同。放課後の時間を無駄に費やすのは惜しい。
あたりはまだ明るいとはいえそろそろ夕方になろうかというような微妙な色合いであった。
他のクラスからも机を運んだり、おしゃべりに興じる声が響いてきた。
これから「THE FREE TIME!」である。
部活動に励むもよし、外の町に繰り出すのもよし、学園を探索すのもよし。
遊ぶことが本業ともいえる学生としては一分一秒がおしいのである。
勉強? ぬかせ、遊ぶことも勉強だ!

「私はまき絵の様子見てくる」

「あ、わたしも」

いつもの仲良し4人(いまは3人だが)は残りのメンバーの寝ている寮に戻るようである。
あの後まき絵は目がさめてピンピンしているのだが、昨晩の記憶があいまいなのと軽い貧血になっていることがわかったので、
大事をとって早退していた。

「木乃香、どうする?」

「ん〜そうやね、今日はひき肉があるから……」

「違う!」

「わかっとるよ〜ネギ君やろ?」

「あ、あの……」

「ん? どうしたの本屋ちゃん」

宮崎のどかが声をかけてきたので話を中断するアスナ達。
普段お世辞にも積極的とは言いがたいこの少女が自分から話しかけてくるとはかなり珍しい。
窓から夕日の光が教室に差し込み、この時間から部活動が始まったのか遠くのほうでかすかに喧騒が聞こえる。
すっかり人気のなくなった紅い教室で、アスナは軽い立ちくらみを覚えた。

―――紅い日差し。おぼろげな記憶。立ち上る紫煙。泣き叫ぶ自分。血まみれの誰か。血まみれの――――

「どうしたんやアスナ?」

はっとわれに返るアスナ。見れば木乃香とのどかがこちらをいぶかしげに見ている。
どうやらぼーっとしていたらしい。もうさっきの立ちくらみもしない。
何か思い出していたような気がするが、なにを考えていたのかもう思い出せない。まるで夢から覚めて夢を見たことは
覚えているが、内容が思い出せない現象によく似ている。

「おなかでも空いたん?」

「・・・・・・あんたの中の私を一度確かめる必要があるわね・・・・・・」

軽口をたたきながらのどかに向き直る。
話しかけてきたからには用があるのだろう。そういえばこの少女と常にともにしている2人組みの姿もない。

「あれ? パルと夕映ちゃんは?」

「2人は先に帰りました〜。パルはもうすぐ締め切りなんで・・・・・・」

「ああ〜そういやもうそんな時期やな〜。またギリギリなん?」

「はい〜・・・・・・」

そういって軽くため息をつくのどか。早乙女ハルナはいわゆる同人誌というものを書いている。
ジャンルは問わず彼女が面白いとおもったものを書くので、たまにオリジナルも書く。
絵の質、話の内容・構成。どれをとってもかなりレベルが高く、漫画をあまり読むほうではないアスナですら面白く読んでいる。
つくづくクォリティの高いクラスである。

「あれ? 本屋ちゃんは手伝わなくていいの?」

「私は図書館の仕事があったんで〜」

「は! うちもやったっけ!? 忘れてたわ〜」

「ってコラコラ、大丈夫なのそれ?」

「いえ、そしたらさっき先輩からメールで今日の仕事はなくなったらしいです」

「そうなん!? ・・・・・・あ、ほんとや。メールきとる」

ごぞごそと自分の端末を操作する木乃香。こちんと自分の頭をたたくところがかわいらしい。
しっかり者の木乃香がこういうポカをするのは珍しい。なんだかんだでネギのことが気にかかっていたのだろうか?

「はい〜ですから一緒に帰りませんか?」

「う〜ん・・・・・・ネギ君のことも気にかかるけど、晩御飯用意せなあかんしな」」

「そうね、とりあえず帰りましょうか」

自分の席に戻り、かばんを取って来る。
廊下には何人かの生徒が残っているが、やはり帰るようである。
春とはいえまだまだ日が沈むのも早く、そろそろ空も夜の気配が迫ってきている。
窓の外を眺めれば東の空に星が瞬いているのがみえることだろう。

校門を出るころにはすっかり日が落ちていたが、桜並木沿いの街頭に光がともり別段暗いとも感じないほどである。
3人は女子中学生らしく噂話に花を咲かせたり、今日の晩御飯のメニューのリクエストを取ったり、宿題のことを話したりと話の種は尽きない。
やがて寮の門が見えてきたとき、ふとのどかは事務室に用があるのを思い出した。

「事務室? 最近物騒だから寮の中を通っていったら?」

とアスナは言う。
というのも、寮と事務室はくっついているからである。
だが、寮のなかはすさまじく広く、また階段の上り下りが多い。
入学してからか成り立つアスナ達でさえ未だに立ち入ったことのない階すら存在する。
あまりに大きいのも考え物という使い古した言葉の良い例である。
それに彼女達がいるところから桜通り沿いに迂回すれば早く・かつ楽につけるのである。
お世辞にも体力があるとはいえないのどかがどちらを選択するかは自明の理といえただろう。

「そう? じゃあ気をつけてね」

「パル達には言っておくえ〜」

「ありがとうです〜」

そういって中に入っていくアスナと木乃香を見送り、のどかは門に入らずそのまま通りを歩き出す。
門から離れるにつれてかすかに聞こえていた生活音がなくなり、時折街頭が軋む音や、電灯が瞬く音以外何も聞こえなくなる。
空を見上げれば星が瞬いていて、桜の木々が街頭の光に照らされて薄く光っているように見える。
無音の世界にたった一人で歩いていくのどか。
そのことが少し現実味をなくし、のどかの好きな御伽噺の世界かのように演出していた。

「こういう時は妖精さんでもでてくるんですよね〜」

なんて珍しく独り言までぽつりとこぼれてしまう。
自分のコース選択に満足感を覚えるのどか。見ればもうすぐ最後の曲がり角である。
ここを過ぎれば事務室はすぐそこ。やっぱ危ないことなんかなかったとスレンダーな胸を撫で下ろした。
と―――

「妖精はいないが化け物ならいるぞ? 宮崎のどか」

―――時が凍る。
最初に思い浮かぶのは言葉の意味。続いて思うのは声の主。
どこかで聞いたことのある声は、しかし振り返ることを一切許さない冷徹な響きを含んでいる。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖いコワイコワイコワイコワイ―――!
だが足が竦んでしまって動けない。手はギュッと握り締めてしまいまるで石のなったかのようである。
呼吸が荒くなる。瞳孔が開き、音も後ろから迫るしずかな呼吸音以外何も聞こえなくなる。
そして。
あまりに慣れないこの状況に宮崎のどかは。

――――あっさりと意識を手放した。

 

「む?」

突然崩れ落ちた標的をいぶかしげに見つめる襲撃者。
自分はまだ何もしていないはずなのだが、突然糸が切れたかのように倒れてしまった。
まぁ手間が省けてよかったと深く考えずに手を伸ばす。

パキィィィィィン!

甲高い音があたりに響き渡り、襲撃者が吹き飛ばされる。

「がっ・・・・・・! く、また魔性石か・・・・・・この前といい一体誰が」

「そういうあなたは誰なんですか?」

すっ、っと目が細まる。
うかつだった。さっきの音は本来の持ち主に、砕けたことを知らせる音だったのである。
ならば本来の持ち主であるこいつが―――
振り向きざまに瓶を投げつける。相手――ネギが自分の顔と、破裂した瓶からほとばしる氷のつぶてに驚いている隙に後ろに跳び退り、走り出す。

「なっ・・・・・・! あなたは!?」

「ふん、生徒を放置しておいていいのか? ネギ先生」

そういって襲撃者―――エヴァンジェリンは笑い、見えなくなる。

「く、どうすれば・・・・・・「ネギ!!」あ、アスナさん!」

声がするほうを見ればアスナが走りよってくる。
どうやら心配でのどかの後を追いかけてきたようである。
ぜーぜーと息をきらしつつネギの腕で眠るのどかを見るアスナ。

「ちょっと何事なの!? さっきのあいつは・・・・・・」

「アスナさんすいません! のどかさんをお願いします!」

「え、ちょ、ネギ!?」

有無を言わさずアスナにのどかを押し付けると、エヴァを追いかけるネギ。
だいぶタイムロスだが風の加護をつけた自分の足なら間に合う・・・・・・いや間に合わせてみせる!
被害にあった生徒のために、なによりなぜ自分の生徒がこんなことをしているのか問いただすために!

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき(という名の言い訳)

ものすごくお久しぶりです!
たぶんはじめまして!な、方がおおい気がする蒼月です。
今回やぁぁああっとエヴァ様がでてきました!
ほんとはもっと書きたかったのですが・・・・・・ひさしぶりなもんで具合がつかめないorz
大学受験なんか春で終わって今大学生活真っ盛りです。
なのに更新が遅れたのはひとえに!

・・・・・・サークルです・・・・・・(だめ人間)
これからまた時間が出来次第書いていきたいと思いますのでよろしくおねがいします!

 

さて、今回から作中の短いAFTERとかNGを書いていきたいと思います。
これはとある方の発案なのですが、今までは時間がなくてできませんでした。
上のシリアスさが折れたりするかもしれないので、シリアススキーな人は読まないほうが・・・・・・w
それでも良いかたはどうぞ〜

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方置いてきぼりを食らったアスナはポカンと呆けていたがすぐに取り直し、のどかを事務室に連れて行くことにした。
詳しい事情はわからないが、ネギがなにかに巻き込まれていることを意識しながら。

「でも・・・・・・!」

苦しげに、忌々しげに搾り出す。
自分がまた厄介ごとに巻き込まれていることではない。
ネギが自分に相談しなかったことも・・・・・・まぁ少しはあるが違う!

なにより!

「どう事務員に説明すればいいのよぉぉぉぉ!!」

どこまでも苦労人なアスナさんでありましたとさ。

 

 

back | index | next