この世には
常に優劣がある
だが時折
種を超える優劣が生まれる
「『プロジェクトK』、成功しました!」
白衣の女性が叫ぶ。
「まぁ、予想の範囲内だ。『国級(くにしな)』の血筋を持ってすればな」
白衣の中年男性が、にやりと笑う。
ベッドに寝ているのは7人の男女。
まだ皆、年端も行かぬような子供たち。
「さぁ、明日から実験開始だ。久々に面白いデータが取れるぞ………!」
子供たちのベッドには、それぞれ漢字が書かれている……。
『万能』
『英知』
『破壊』
『迅速』
『万観』
『来知』
『全癒』
「……まずは、マシンガンでもぶっ放してやれ」
第1話・現実の悪夢
ジリリリリ……
ジリリリリ……
ジリリ『メキャッ!』
「ふん……三十秒前から鳴るとは。この時計も廃棄処分だな」
少年の左ストレートが、やや内角を狙いえぐり込むようにして入った。
無論のこと、目覚し時計は壊れる。
拳打にも関わらず、真っ二つになっている……。
拳打の主は大きく伸びをした。
少年は眼鏡をかけると、いつもと違う部屋だということに気づく…。
しかし、深くは気にしない。
さぁ、学校に行く仕度だ。
そう思い、窓を開放する。
爽やかな風
済んだ空気
心地よい日差し
見渡す限りの平凡な住宅
が
『いつもと違う住宅街』
少年は焦った。
馬鹿な!
また親父の謀略か?
…………いや、もしかしたら姉貴の……。
二分ほど思考を張り巡らせたが、面倒臭くなってやめた。
階段を降りて、リビングに向かう。
構造は『昨日までいた家』と何ら変わりない。
「小賢しいマネを」とか言いながら、リビングに入る。
リビングに関しては、家具の配置も同じだ。
トースターのコンセントを刺し込み、パンを入れる。
「そういや、某米国大統領をからかったCMは、ビデオテープいれてたなー」
どうでもいいことをつぶやき、牛乳をコップに注ぐ。
実にどうでもいい。
ふと、テーブルが目に入った。
正確には、テーブルの上にある置手紙だ……。
「あん?えー……と?」
『月戒(つきみち)へ
愛しの愛しのお姉さんとお兄さん(上)から
兄・義緋沙(よしひさ)から
月戒。頭の良いお前なら状況を飲み込めると思う。
親父の謀略だ。
まぁ、私のときも世狩阿(よしゅあ)のときもそうだった。
深く考えたら負けだ。
私の私的な文章は、あとで書く。
なお、これは親父からの伝言だ。
やっほー!
月戒。
お前に『試練』を与えよう!
1・『付加能力』を『神鳴流剣士』に試せ!
2・いま、凶悪な通り魔が出没している。倒せ!
3・『呪術』・『魔術』を防げるようになれ!
…………読み易くしておいたぞ。
さぁ、個人的な用件だ。
『ネギ・スプリングフィールド』と接触し、助力しろ。
こちらは私の課題だ。
こなす・こなさぬは自由だが、な。
これにて文を終える。
体に気をつけろ。
はぁい♪お姉ちゃんよ♪つ・き・み・ち☆
お姉ちゃんは特に言うこと無いの……。
でもねでもね!
月戒が心配だから、護衛付けといたわよ♪
護衛はあの『木々原 黒蓮(きぎはら くれん)』よ♪
近くに住んでるけど、あの子なんか家の男に弱いみたいで…
…。
ピンチになったら勝手に来ると思うわよ?
いつもストーキングしてるはずだし……。
変な気配がしても、すぐ攻撃しちゃ、ダ・メ・よ♪ 』
グシャッ、と手紙を握りつぶす。
「……やっぱな。嫌な予想が当たった」
テレビをつけて、ニュースを見る。
他愛の無い政治情報や、市場のニュース……。
トーストにバターを塗りながら、ただ見つめる。
パンを口に運ぶと、例の通り魔のニュースがやっていた。
執拗に相手の顔を切り刻むという残酷性。
相手は女子中学生ばかり。
現在被害者は7人……。
目撃証言を見る…。
身長200cm近く。
広い肩幅。黒ずくめの服装。
胸糞悪ぃ。
別のニュースに変えるが、同じような放送だ。
ため息をつき、トーストを一枚食べ終える。
二枚目に差し掛かった。
この局でも、犯人の凶悪性ばかり取り上げる。
被害者の名前が出ているのは、プライバシーの侵害だろう?
いつもながらそう思う。
犯人の顔と名前出しやがれ。
例えガキでも。
そんなことを思いながら、二枚目を平らげた。
洗面所に向かい、すぐに洗顔する。
歯を丁寧に磨き、洗顔料で顔を洗う。
シャツとズボンだけでは流石に冷えたな。
少し身震いしながらそう思った。
パジャマを脱ぎ、カッターシャツを羽織る。
ご丁寧に、クリーニング済みだ。
ブレザーを着終えたところで、一つ心に突っかかった。
『登校時刻は?』
仕方なく、先ほどの手紙を広げる。
表には……さっきの内容で全部だ。
裏を見ると付け足したように時刻、時間割が書いてある。
テーブル下の鞄を開けると、今日の分の教材が入っていた。
肝心の登校時刻に目が行く…。
『8時30分』
テレビを見る。
『8時26分』
手紙を見ると、学校の位置も書いてある……。
『徒歩、一時間なり』
「馬鹿か!この姉と兄は!!!」
急いで鍵を確認し、靴を履き、家を出る。
勿論、施錠は忘れない。
「職員室がわからないから全力で走らなきゃいけねぇじゃねぇか!!!」
ドン
と、何かが弾ける音がした。
少年はもう、その場にはいなかった。
更に言えば、2秒で到着した。
無論、遅刻しかけた生徒はとばっちりを受けただろう。
ずしゃぁぁぁあ、っと滑る音がした。
アスファルトの地面から煙がたっている。
「っし!着いたぁ!……ここか…………」
生徒達の痛い視線を受けながら、校門に刻まれている学校名を見る。
「え〜と……『麻帆良学園』か………。ん?」
少年はピンときた。
「おお!昔住んでたとこの近くじゃん!……てことは多分…」
少年は期待に胸を膨らませた。
先ほどまでのイライラを忘れて。
課題は覚えている。
恐らく、『ネギ・スプルングフィールド』は学校関係者だろう
。
課題の簡単さを噛み締め、校門をくぐる。
遅刻しかけたことを忘れたまま……。