第0話『片寄りのある天秤』
ある日誰かが
ずっとずっと昔に誰かが俺に言った
人間は生まれながらにして不平等だ
俺は何一つ不自由無く育った。
裕福な経済状態。
やさしい兄に姉。
食べ物・服・心許せる友人
欲しいモノはほとんど手に入っていた。
世界には何一つ自由にならない人々もいるのに。
貧しい家庭。
厳しい兄弟。
食事さえまともにできない日もあるのだ。
住処も無く、着る物も無く。
死すときは墓も無い
だが、俺は違う。
裕福な家庭。
やさしい兄に姉。
可愛い妹たちに、執事までいる。
住む家も豪勢極まりなく、
食事をとれない日など一度も無い
着る物もほとんど一級品だ。
(親と仲が悪いのは閉口しようか)
墓も、さぞ豪勢なのだろう。
墓を作る必要があれば、だが。
俺は何一つ不自由無く育った。
銃弾を受けても、えぐり出せばすぐに蘇生する体。
この世のほぼ全てに勝る俊足。
雷と炎を操る異能力。
回転の早い頭。
格好良いとは言わないが、端正である容姿。(←自分で言うべきではないな)
頭以外なら全てにおいて俺に勝る姉。
人を殺すことなら右に出るものはいない兄。
多人数を短時間に葬るための戦術。
罵声
卑下の視線
苦汁の末に流れる涙
死の恐怖
俺は何一つ不自由無く育った。
俺は、何一つ。
何一つとして不自由無く育った。
きっとそれは、世の中で一番幸福なのだろう。
本当に『神様』ってのは不公平だ。
こんなに『幸せ』な人間を創ったのだから。