さくら達は、お茶を飲みながらエリオルが入ってくるのを待っていた。
少しするとスピネルと奈久留を伴ってエリオルが入ってきた。
「久しぶりだな、侑子!」
「えぇ、久しぶりね。 エリオル…… 其れに、ルビーにスピネルも」
エリオルと侑子は、挨拶を交わした。
「さくらさんも、お久しぶりです」
「四月一日、早くお茶を出しなさい!」
侑子は、色々あってボロボロの四月一日に命じた。
「侑子、其処まで扱き使わなくてもいいのでは? 彼、病み上がりなのだろ」
「所で、エリオル。 日本には何の用で来たの?」
侑子は、答えずに話題をふった。
「近々、麻帆良の地で、サウザンドマスター…… ナギ・スプリングフィールドと私に怨みを持つ者達が行動を起こすから」
「あの、『悠久の風』に属していたヒトね」
「先日、占ってみたが、怨みを持つ者は少なくとも200人はいる。 更に私に怨みを持つ者の子孫は50人ぐらいいるだろう……
今の私に正確な未来を予測する力は無いからな」
「彼方は、数年前『此の世で、最高の魔術師ではない自分』と言うネガイを叶えたものね……」
「さくらさんに、お願いして『此の世で、最高の魔術師』から開放してもらいました」
「で、エリオル。 さくらちゃんに、対価払った?」
侑子は、エリオルに聞いた。
「いいえ、まだ払っていません。 其の時は、まだ時ではなかったから……」
「払わないと契約違反になるわよ? ネガイをかなえて貰って対価を払わないと色んな物にキズが付くわよ」
「では、侑子。 クロウが、預けた魔術書を持ってきてください」
エリオルに言われると侑子は、立ち上がって部屋を出て宝物庫に向かった。
史上最大の魔法大戦
第三話『さくらのネガイと対価』
侑子は、宝物庫からクロウが預けたと言う物を持って来た。
「持っていたわよ。 エリオル」
「ありがとう…… ルビー、さくらさんを呼んで来て下さい。 後、ケルベロスと月も……
大道寺さんが、いても構いませんよね?」
「えぇ、構わないわ!」
「大道寺さんも一緒に呼んで来て下さい」
エリオルは、ルビー・ムーンの仮の姿の奈久留に頼んだ。
「わかった! 呼んで来るね〜」
奈久留は、さくらと知世、ケルベロスと月を呼びにいった。
「侑子、さくらさんから対価を貰わないといけないのだろ?」
「さくらちゃんから此の世界の小狼くん…… クロウの血縁である彼の記憶を貰わないといけないの。
クロウの血縁、飛王・リードが、異世界『玖楼国』の姫の羽根を色んな世界に飛ばしたから」
「夢は、終わらせなければならない……」
「クロウや私と違って、諦めが悪いわ。 『失ったモノは、二度と元には戻らない』と言うのに……」
「あの時、諦めさせられなかった私にもあります。 諦めが悪いのは、あの男の性格ですから如何しようもありません」
「そうね…… 何時かは、今までの対価を払う事になるでしょうが……」
「李くんからは、何を対価として貰ったの?」
「『時間』と『自由』…… そして、『関係性』」
「エリオル〜呼んで来たよ!」
「此の話は、後で続けよう」
エリオルは、話を一旦終わらせた。
「そう言えば、さくらちゃん。 クロウからの対価は、まだだよね」
侑子は、さくらに聞いた。
「まだ、貰って無い気が……」
「そう…… 之がクロウからの貴女への対価よ」
そう言って、侑子はテーブルの上に一冊の本を置いた。
「之が?」
「クロウは、自らのネガイを叶えた後、必要になる事を見越してネガイの対価として私に預けていたの」
「確かにさくらさんにネガイの対価、『虚無の真実』お渡しします」
「『虚無の真実』?」
「其の書には、『クロウカード』と同じように、クロウが作り出した魔法…… 虚無について書き記してあります。
此の世に存在する魔法を持ってしても不可能です」
「如何して、クロウさんはそんな魔法を?」
「はじめは、研究の為にクロウ・リードも行なっていたようです。 しかし、後になってクロウも其の魔法の危険性に気づきました。
悪しき者の手に渡ると取り返しの付かない事態になる事が起こると占いの結果に出たからです。
其れを避ける為にクロウ・リードは、虚無の魔法を記した書に封印を掛けました。 『クロウカード』、『クロウの祈祷書』、『クロウの封印書』、
『虚無の真実』が揃わないと使えないようしました。 クロウは、『クロウの後継者』に限って全て揃わないでも使えるようしておりました」
「せやけど、クロウはそんな事したんや!」
「クロウ・リードも、さくらさんならそんな心配は無いと分かっていたようです。 『真のクロウの虚無』を使うには、条件があるのです」
「条件って何?」
「それは、私と侑子が相応しいと認める必要があります。 其れに香港での件は、戦闘でさくらさんの魔力がある程度消耗していたから
犠牲者は出ませんでしたが、力をセーブせずに使っていればヒトを殺めています」
「クロウさんが作った『虚無』ってそんなに凄いの?」
「はい。 クロウ・リード自身も制御に手を焼いていました。 ですから、封印場所を誰にも教えていなかったのです」
「クロウは、唯一私にだけ所在を教えていたわ。 最後に逢った時に…… そして、虚無の書を読む方法も」
「読む方法? 読むには何か必要なんですか!」
「読むのに必要な物は、既に持っているわよね?」
「必要な物って……」
「さくらちゃん、必要な物ってきっと鍵の事ですわ」
「鍵って、此の鍵?」
さくらは、星の鍵を出して聞いた。
「はい。 其の鍵で開けなければ見ることも読むことも出来ません」
「ヤッパリ」
「流石は、大道寺さん。 魔力を持っていない代わりに鋭い洞察力と観察眼をお持ちだ! 之で、魔力をお持ちになっていたら私も困ったかも知れません。
侑子は、如何思う?」
「魔力を持っていれば弟子に欲しいくらいの逸材ね」
「侑子も、そう思うか…… さくらさんは、如何思う?」
「魔力だけなら、クロウや私より遥かに上ね」
「あの時はさくらちゃんが、使った魔法はなんだったのですか?」
知世は、聞いた。
「あれは、さくらさんが作り出した新しい魔法と思います」
エリオルは、説明した。
「そう言えば、さくらさん。 幽霊嫌いは、克服できませんか?」
「だって、怖いものは怖いんだもん」
「じゃぁ、さくらちゃん。 侑子さんに頼んでみては如何ですか?」
「幽霊嫌いを克服しないとコッチの世界でやっていくには厳しいわね……
いいわ、さくらちゃんのネガイ叶えてあげましょう」
「本当に出来るんですか?」
「私が出来ると言ったことは出来るの…… で、対価だけど……」
「対価て、何を払えばいいのですか?」
「夏休みが終わるまで私の手伝いをしなさい!」
「それだけで、良いんですか?」
「本当は、足りないんだけど…… 小狼くんの件で対価を貰っているから十分でしょう。
さくらちゃんにとっては、一石二鳥なのだから」
侑子の言った事にさくらは、?になった。
「ですから、こう言う事ですよ。 さくらさん…… 貴女は、幽霊など見えるようになった上に侑子さんから直接指導してもらえるのですよ」
「さくらちゃんは、魔力が強いから一人で異世界に行って来てもらうかもしれないわ」
「侑子さん、私が自由に異世界に行き来できる事知っていたんですか?」
「えぇ、貴女が時空管理局とも関係があることもね…… 其れに、知世ちゃんも」
「侑子も一時、居ただろ……」
「懐かしい、話しね。 今度は、さくらちゃんが時空管理局に出逢った。 エリオルが予想した通りね」
「でも、予想外の出来事も起こりましたし……」
「予想外の出来事って」
「それは、さくらさん。 貴女が、管理局で『闇の書』…… いや、『夜天の書』に替わる魔導書と其の守護者を創るとは驚きです。
しかも、改ざん出来ないようにしておくとは……」
「あ、あの〜。 たこ焼き、焼いてもいいですか?」
四月一日は、聞いた。
たこ焼きと言う言葉に、ケルベロスとスピネルとモコナが反応した。
「「「たこ焼き!」」」
「わぁ! こら、ヌイグルミ共邪魔するな」
「なんやと! もういっぺん言ってみい?」
ケルベロスは、真の姿に戻ると四月一日の上にのっかった。
「ワイは、『黄金の瞳の最強の守護獣ケルベロス』や!」
「私は、『スピネル・サン』。 お忘れなき用に」
スピネルは、四月一日の頭に片足を置いて言った。
「四月一日! 何時まで焼くのかかっているの?」
「お前ら、食うの早すぎだ!」
焼いたたこ焼きをケルベロスとスピネルとモコナが競うように食べた。
いつの間にか、ケルベロスとスピネルは仮の姿に戻っていた。
そして、此処に『たこ焼き戦争』の火蓋が斬って落とされた。
「あらあら、あの様子では此方に回ってくる気配がありませんわね」
モコナやケルベロスを見ながら知世は、言った。
「ケルベロスもスピネルも程々にしとけよ。 後で、美味しい物が食べれなくなるぞ!」
エリオルの忠告も聞かずに食べ続けるケルベロス、スピネルである。
其の影で、滝のような汗を流しながら必死で焼いている四月一日の姿があった。
其れから、30分以上に渡って続いた『たこ焼き戦争』は、引き分けに終わった。
焼き手と喰いてだと喰い手側の圧勝だったのは言うまでもない。
「其れにしても、モコナもよう食うたな〜。 ワイやスッピーと互角に喰うとは、中々やるやないか!」
「えっへん!」
モコナは、威張った。
「あ゛ぅ」
四月一日は、奇怪な声をあげてへばっていた。
そんな四月一日に侑子が命じた。
「四月一日、今日は冷麦を作りなさい。
20人前は、軽くいるわよ」
「如何いうことです? そんなに作って如何するんですか」
「大食いが居るのよ。 そうでしょ? 月城くん」
「そんなに食べさせてもらって良いんですか?」
「いいのよ。 休んでいる間があったら作りはじめなさい」
時計の針は4時半を指そうとしていた。
「侑子さんは、何時も忙しい時に限って手間のかかる物を作れと言うんですか!」
「あらっ、昨日言ったじゃない? 今日、朝から生地を打ちなさいって……
ちゃんと打ったんでしょ?」
「打ちましたとも。 ちゃんと打っていますよ!」
「じゃぁ、早く切って茹でなさい」
四月一日は、言われるがまま炊事場へ消えていった。
「彼は、変わって来ているのか?」
「彼方が、クロウや私が予想した通りにね……」
「ネガイは叶えたのか?」
「いいえ、まだよ。 ネガイに見合う対価が貯まってないから」
「彼は、近々大きな試練に直面する。 彼方に出逢って以降最大の試練が……」
「其の試練は、四月一日が完全に変りきれるかの分かれ目になるわね」
「侑子さん、四月一日って人の対価、そんなに重いんですか?」
さくらは、侑子に聞く。
「四月一日のネガイ、『アヤカシを見、引き寄せる体質をかえる』は、トテモ重いわ。
叶える私も骨が折れそうぐらい……」
「彼には、之からしなければならないことがあります。 私の…… クロウ・リードの血筋である飛王・リードと戦ってもらわないとなりません。
其の時は、異世界『玖楼国』の貴女…… サクラ姫の『記憶の羽根』が全て揃った時です」
「エリオル、それ以上は『許される干渉範囲』を超えるわ。 さくらちゃんが自分で知るか、話せる時が来るまで待つしかないわ」
「ねぇ、エリオル。 今日、此処に来たのにも理由があるんでしょ?」
ルビーは、エリオルに聞いた。
「私…… いえ、クロウ・リードと侑子の古い友人が訪ねてくるのだよ」
「古い友人?」
さくらは、古い友人と言っても分からないでいる。
「そう言えば、今日だったわね。 『真祖の吸血姫』が遊びに来るのは……」
「さくらさんには、いらしてからお話ししましょう…… 其の方が、理解しやすいでしょうから」
「後で、四月一日に特別料理を用意させるとしましょう」
侑子がそう言った後、炊事場で四月一日が盛大にクシャミをした。
其れから、数分後……
「お待たせ、しました……」
四月一日は、出来上がった冷麦を運んで来た。
其の一つは、大盛りではなく、特盛りだった。
「「「「「いただきま〜す」」」」
雪兎は、大皿に山のように盛られた冷麦を凄いスピードで口へ運んだ。
四月一日は、雪兎の大食いぶりに驚いた。
「アレだけ時間掛かって作ったのに、たった数分で完食……」
雪兎以外、ユックリと冷麦を会話しながら食べた。
次回予告
「侑子さんの所で夕飯を食べて、話をしていたのだけど…… 知らない人たちがおミセに来たの」
「其のヒトは、私の古い友人と其の知り合いのヒトですよ」
「でも、でも……」
「さっそく、さくらちゃんに実施してもらいましょう」
「ほぇ〜次回、史上最大の魔法大戦『さくらと真祖の姫君と弓塚さつき』」