「
いつものように草むらで、ネギは詠唱を終了させた
特に何かが起きたわけではないらしいが、よく見ればその腕に細くて黒い帯の様な物が3本巻きついている
「よし、これで僕は三日間ただの人だ」
頑張るぞ〜 と、意気込んでいる姿を見守りながらジークは一人考える
もしネギがクビになった場合、どうしたらいいのか?
恐らくイギリスへ戻されるだろうから、自分もドイツに帰ることになるのだろう、と
「……数学の担当をしてる以上、俺も協力する必要があるのか」
ネギに気付かれないように木陰に隠れながら、ジークは軽く溜息を吐く
というのも、一部の生徒に数学を教えることの難解さを既に知ってしまっているからだ
第3話:図書館島へ―前篇
雲ひとつ無い、という程でもないがよく晴れた清々しい日
「じゃあ今のところを訳してもらいます」
ネギもクラスに馴染んできたようで、授業を進める手際も最初の頃から比べると見違えた
時折冗談を交えるなどの工夫もされている点は、評価されていることだろう
「なかなか上手くやっとるのか、ネギ君は」
場所を移して学園長室、ネギの担当する授業も終わった頃
「はい、生徒とも打ちとけていますし、授業内容も頑張っていますわ
この分なら指導教員の私としても、一応合格点を出してもいいと思っていますが……」
学園長と対峙しているのはしずな
どうやらネギの授業についての報告をしているようだ
その報告に納得のいっている感じではある学園長だったが
「ただし、もう一つ彼には課題をクリアしてもらおうかの
才能ある
怪しげな笑い声とともに、そう宣言した
ネギがしずなに学園長からの『ネギ教育実習生最終課題』と書かれた封筒を手渡されたのは翌日
これから授業を始めようかという時だった
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その夜
「この図書館島は明治の中頃に学園創立とともに建設された、世界でも最大規模の巨大図書館です
ここには二度の大戦中、戦火を避けるべく世界各地から様々な貴重書が集められました
蔵書の増加に伴い、地下に向かって増改築が繰り返され――現在ではその全貌を知るものはいなくなっています
そこで、これを調査するために麻帆良大学の提唱で発足したのが……私たち麻帆良学園図書館探検部なのです!」
期末試験が迫り、ネギへの最終課題として2-Aの最下位脱出を言い渡された
それが成功できれば彼は正式な教師になれるらしい
だが、それを曲解してしまった数名の生徒によって“魔法の本”探索が決行
外に連絡係としてハルナとのどかを残し、現在図書館島の地下3階に到着したところである
「ここが図書館島地下3階、私たち中学生が入っていいのはここまでです」
と、夕映の現在位置についての説明を聞いているのかいないのか
その時のネギのはしゃぐ様は筆舌に尽くし難い
「アスナさん見てください!
これなんか凄く珍しい本で――」
そして、仕掛けられていた罠を誤って作動させてしまった時の表情もまた然り
「ねぇ夕映ちゃん、あとどれくらい歩くの?」
まき絵の問いに、夕映は軽く頷くと再び口を開いた
「内緒で部室から持ってきた宝の地図によると……
今いるのはここで、地下11階まで降りて地下道を進んだ先に目的の本があるようです
往復でおよそ4時間かかり、現在は夜の7時ですから――」
「じゃあちゃんと帰って、一応寝れるね
よかった、明日も授業あるし」
二人のように会話をしたりして各々が適当に休憩を取っている間、ネギは
「え、読むだけで頭が良くなる“魔法の本”!?」
こんな時間に図書館島の地下を歩かされる理由を聞いて驚きの声を上げる
「そういうこと
ここにはさっきみたいな罠がいっぱいあるらしいから、魔法の力で私たちを守ってよね」
元々ネギをこの“魔法の本”探索に連れてきたのはそれが目的でもある
というか、それ以外に理由などないと思う
そのことを知ってか知らずか、アスナにとって予想もしない答えが返ってきた
「あ、魔法なら封印しましたよ」
この一言の意味を正確に理解出来たとき、アスナの上げた驚きの声が木霊したのは言うまでもない
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翌日、ネギたちの消えた学園ではちょっとした騒ぎが巻き起ころうとしていた
「ネギと2-Aの生徒数名が行方不明という報告があったのですが」
ジークは朝一番に、ハルナからの電話でその事実を聞かされた
目的なども詳しいことまでは聞き出せなかったが、図書館島にいるという時点で大体の想像は付く
しかし仮にも学園の敷地とはいえ、ネギは今魔法を使えないのだ
万が一の為にネギ及び2-Aの生徒数名の捜索許可を学園長に貰いに来たのである
「ふむ、危険はないと思うがの
まぁ丁度いい機会じゃし、試験も近いことだから許可しよう」
いつものように底の知れない笑い声と、言葉にある違和感
どこか引っ掛かるものはあるが、それらを頭から振り払う
そしてその場で軽く礼をしたかと思うと、彼は一瞬にして姿を消していた
先日にも増して日の光の暖かい、爽やかな朝
どこからともなく吹き込まれて来るそよ風が心地いい
そんな安らぎの中、非常に和やかな気持ちになれる……ような状況のはずもなく
ネギたちは揃って見知らぬ場所に放り出されていた
目が醒めた当初、一体どういう状況に陥っているのか分からなかった
また自分がどこにいるのか、そもそも何が起こってこうなったのか――
咄嗟に思い出すことが出来なかった
「そ、そうだ
僕たち英単語のトラップを間違えてゴーレムに落とされちゃったんだ……」
ようやく思い出す
昨夜“魔法の本”探索の為に連れて来られたこと
本棚に仕掛けられていた罠に引っ掛かりかけたこと
その後目的の本の元に辿り着いたものの、それを守っていた石像が突然動き出したこと
勿論、そのあと地下へ落とされたことも
「ここは幻の『地底図書室』!?」
夕映の声に思考の渦から現実へと頭を切り替える
「地底なのに暖かい光に満ちて数々の貴重品にあふれた、本好きにとっては正に楽園
ただしこの図書室を見て、生きて帰った者はいないとか」
最後に胡散臭いことを言っているが、噂と同時に存在しているのだから出口もあるだろう
と、今のところはポジティブに考えることにするネギだった
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図書館島の最深部に落下してから迎える、実質2回目の朝
先日ネギの行った魔法の封印も、その効力を残り二日に縮めていた
それでも、朝日と同時に解けるとはいえ試験は明日に迫っている
封印が解けてからなら脱出も可能かもしれないが、戻ってから勉強していては間に合わない
そこでネギが提案したのが勉強会
しかもそれが出来るようにセッティングしたのではないか、と疑う程に色々な物が揃っていた
「でも不思議だよね〜
こんな地下なのに都合よく全教科のテキストあったり、トイレにキッチンや食材付きで」
「いたれりつくせりアルね」
試験勉強も一段落し、一同は休憩モード全開
ここは確かに勉強に向いているが、それと同じくらい居心地がいいらしい
なので、特に夕映は気に入ったようだ
本を片手にくつろいでいる
彼らがそれぞれに休息を満喫している頃
ネギは一人で辺りの探索を再開していた
「ずっと水に浸ってたハズの本がまったく痛んでないし……
この無秩序な本棚の並び、誰がこんなモノ作ったんだろ?」
思えば本当に不思議なことだらけである
侵入者を撃退する為の罠はともかく、明らかに濡れているというのに痛まない本
他にも人が生活出来るというか、生活する為のような設備
昨日の事を振り返れば、2体のゴーレムに伝説のメルキセデクの書
などと物思いに耽りながら、ふと目線をずらす
「あ、腕の封印の二本目が消えてる」
腕の印が目に入り、これであと一本と少し安堵した
なりふりさえ構わなければ、明日の朝には脱出が可能だろう
「だったら、あとは出口を探すだけかな」
昨日はまだ探していない所もまだいくつか残っている
とりあえず今日はその辺りを中心に見て周ることにしたようだ
「ス、スミマセンッ!」
湖と表現するには小さい水溜りに、ネギの声が響き渡る
丁度まき絵に古菲、楓が水浴びをしていたらしい
彼女ら、特に前者二人にとってネギはからかい甲斐があるらしく、先生というより弟と遊んでいる感じだ
二人はネギをからかい、楓はその様を見て笑う
一見して呑気で平和なワンシーンのようだが、まだ誰も気付かない
背後に巨大な影が迫っていることに
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ネギが遊ばれている頃のジークはというと
「これは平安初期に記されたという『滋川新術遁行書』!?
今では失われて存在しないと聞いていたが……
そういえばさっきの棚にも『メガレ・シンタキシス』の原本があったっけ
ヨーロッパに於ける弾圧で焼失したハズの星表――
『アルマゲスト』と訳された物しかないハズの本だとか
おぉ、これは『
カバラの秘術たるゴーレムの製造、今はラテン語に翻訳されているんだったな」
地下10階にて読書を満喫中
〜あとがき〜
ちょっとテンポが早くなってしまいました
でも最後にぶっ飛んだジークが書けて満足です
そういえば、学園長からの手紙には『最下位脱出できなかったらクビ』とは書かれていない気が……
最終課題と言ってるからクビもある、という風に解釈してますが