「ネギ君、この修行はおそらく大変じゃぞ」
ここは麻帆良学園、学園長室
部屋の中には学園長と思われる老人と、机とを挟んだ向かい側に1人
それともう一人、入り口横の壁に背中を預け、腕組みをしている青年が居る
「ダメだったら故郷へ帰らねばならん」
学園長は、目の前に立つ少年の決意を確認するかのように言葉を紡ぐ
「二度とチャンスは無いが、その覚悟はあるのじゃな?」
その問いに対し少年は、力強い返事で、その覚悟を示してみせる
「は、はい
やります、やらせて下さい!」
こうしてネギ・スプリングフィールドは、“
第1話:始まり
まず最初に落ちてきたのは黒板消し
それを一瞬の間滞空させてしまうネギだったが、状況的にマズイと思ったのだろう
手ではなく頭で受け止める
「あはは……
なるほど、ひっかかっちゃったなぁ〜」
ゲホゲホと咳き込みつつも、そこに生まれた不自然さを誤魔化すように笑って教室内へ
しかし気を抜いた瞬間、水の入ったバケツに矢が数本と次々にトラップが発動
それら全てを生徒達の期待を裏切ることなく、見事に受け止めてみせる
その身をもって
この流れる様な一連の光景に、周りの生徒達から笑い声が上がった
入ってきた人物が子どもであることに気付いたのは、その後のことである
なぜ入り口の時点で気が付かなかったのかは疑問だが
「その子があなた達の新しい先生よ、自己紹介してもらおうかしら」
入って来たのが子どもだと知り、別の意味で騒ぎ始める数名の生徒
その様子を苦笑しながら眺めていた指導教員のしずなは、数度軽く手を叩き、生徒達へ注意を促す
席に着けという合図だ
同時に、それまでしずなの隣で同じく苦笑していた青年も教室へ
そして騒ぎの中心から解放されたネギも、青年と共に教卓へ上がり、自己紹介に移る
「今日からこの学校でまほ……英語を教えることになりました、ネギ・スプリングフィールドです
3学期の間だけですけど、よろしくお願いします」
「ジークベルト・クローゼだ、今日からこのクラスの副担任になる
名前が呼びにくければ『ジーク』で構わない。」
そう言うとジークは、『それと担当科目は数学だ』と付け加える
そして、挨拶も簡潔に済ませた所で辺りを軽く見回した
「何か質問のある者は――」
『質問のある者は手を挙げろ』
と言う前に、至る所から手が上がる
あまりの数に少々気圧されながら、ジークはその続きを言いなおす
「質問のある者は後にしろ、帰りのHRなどで適当に時間を空けてやる
もうすぐ1限目が始まるから、とりあえずは授業に集中だ」
生徒の間で起こるブーイングを、無情なる授業開始のチャイムが押し流した
今日の1限目はネギの担当する英語である
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休憩時間の始まりをチャイムが告げ、また一段と騒がしくなる
授業自体は何か問題があったわけでもなく、無事に終了
その間ジークは後方で授業風景を見学していた
数学の担当としてA組の副担任に就いた彼だが、授業を行うのは明日からの予定である
授業を終わらせたネギは、職員室に戻る為に廊下へ
教室から出て、一人の少女に気付き近寄っていく
「アスナさん、今朝はありがとうございました」
そこに居た少女、神楽坂アスナへ開口一番にそう告げる
「別にいいわよ。アイツらが邪魔だっただけ
それよりアンタ、さっき黒板消しに何かしなかった?」
『さっき』というのはネギが教室に入ってきた時の事だろう
その一言で、遠目から見てもネギの顔色が変わるのが分かる
その様子を察したか、それとも元々興味もなかったのかは分からないが、
「とにかく、私はまだアンタを認めた訳じゃないからね!」
という言葉を残すと、アスナは木乃香に呼ばれてどこかに行ってしまった
ちなみに、ネギとアスナが最初に出会ったのは1限目の始まる30分ほど前の事である
朝、遅刻を避ける為に生徒達は学園へと続く道を走り抜けていく
普段は何十人もの生徒が道を埋め尽くしているが、今週は『遅刻ゼロ週間』の為か人通りは少ない
そして時刻は8時20分を回り、そろそろ予鈴の鳴る頃合であった
その時間の所為であろう、二人の少女もまた焦っていた
「やばいやばい!
今日は早く出なきゃいけなかったのにっ
―――でもさ、学園長の孫娘のアンタが何で新任教師のお迎えまでやんなきゃなんないの?」
「スマンスマン」
前を走っているのは神楽坂明日菜、ツインテールが印象的だ
その後ろを追いかけていくのは近衛木乃香、長い黒髪をストレートにしている
「
少々偏見じみた発言をしながらも、二人はいつも通りに学園へ向かう
時間からして、それが良い事だとは言い切れないが
アスナと木乃香が焦っていたそのほぼ同時刻、ネギは困っていた
それは道に迷ったからというのもあるが、何より自分の置かれている状況にだ
この場に居る、一目で不良と分かるようなガラの悪い連中が3人がネギを取り囲んでいる
さすがに危害を加えられているわけではないが、戸惑うネギの様子を面白がっているようだ
そしてネギがこのような状況に置かれている理由を一言で言うと、道を聞く相手を間違えたから
周りの生徒達は遅刻を逃れる為に大急ぎであったので、引き止めて道を尋ねるわけにはいかない
そんな時に、たまたまネギの目に入ってきたのが今目の前に居る不良たちであったというわけだ
言うまでもないが、不良たちはネギをからかうばかりで道を教えようとはしない
しかしネギが気付いていないだけで、目指す学園の割と近くまで来ていたりする
学園の近くに来ているということは、当然だが予鈴の鳴る音は聞こえる
駅から続いている道でも一応聞こえるが、それは備え付けのスピーカーを通した“音”
スピーカーではないチャイム音が鳴り響いた丁度その時、目の前の不良の一人が吹き飛んだ
「何でこんなトコに子どもが居るのよ?」
ネギの頭上から、戸惑いの中に幾分怒気を含んだ声が響く
見上げた先に居たのはポニーテールの少女アスナ、どうやら彼女が不良を蹴り飛ばしたようだ
「坊や、こんな所に何しに来たん?」
すると、不意にアスナの背後からもう一人の少女、木乃香が顔を出す
「ここは麻帆良学園都市の中でも一番奥の方の女子高エリア、初等部は前の駅やよ」
「そうよ
つまり子どもは入ってきちゃいけないの、分かった?」
アスナは木乃香の言葉に頷き、ネギを睨みつけてくる
ネギがその剣幕に驚き、戸惑いの色を濃くした時
「いや―――
いいんだよ、アスナ君」
前方から声をかけられた
現在置かれている状況を思い出し前を向くと、こちらにゆっくりと近付いてくる男性が二人
一人は壮年の教師、もう一人はまだ二十歳前後の青年
前を歩いているのは壮年の教師の方で、名前は高畑・T・タカミチ、アスナが密かに憧れていたりする
そのタカミチの後ろを付いてきている青年はジークベルト・クローゼ、ドイツ人だ
背もそれなりに高く標準体重をやや下回る体型で、長く伸びた髪は後ろで一つにくくられている
更に、赤に近い瞳と鋭い眼差しは見る者に威圧感すら与えかねない
服装は紺色のシャツに黒いコート、黒を強調したズボン
装飾品は右耳にピアスを一つ、首には濃い青色のペンダントを付けている
声のした方を向いたネギの目に最初に映ったのは、地面に崩れ落ちていく不良たちだった
地面に倒れたまま呻く彼らを避けるようにこちらへやってくるタカミチは、
「久しぶり、ネギ君」
ネギの知り合いだった
その後、タカミチに代わってネギが担任になる事を聞いて落ち込むアスナは、木乃香に連れられて教室へ
ネギはタカミチの案内で、ジークと共に学園長室へと向かった
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6限目も終わった放課後、3時20分頃
校舎から少し離れた広場の中央にネギは居た
場所だけに昼休みなどには生徒達で賑わったりもするが、放課後になると部活等がある為か人気はほとんどない
その証拠に今はネギ一人だけである
ジークは学園長室に呼び出されているのでここには居ない
「やっと一段落だ〜」
溜息を吐きつつクラスの名簿を開くと、何気なく一人の少女の名前を探す
「カグラザカ アスナ……って言うんだ」
タカミチの書き込みも眺めた後、今度は出席番号1番から順に生徒達の顔と名前を覚えていく
そしてある程度の生徒達の顔と名前は把握してしまうと、大きく息を吐いて校舎の方へ目を向けた
実際には、校舎というよりその手前の石造りの幅の広い階段を見る形になる
「あれ……
あれは27番の宮崎のどかさん? たくさん本持って危ないなあ」
階段を下りてくる少女はのどか、彼女は抱えている本で上半身が隠れてしまっている
また、大量の本に集中しているのか足元もフラフラして見るからに危険だ
ネギはその様子を不安げに見つめていたが、彼の視線の先でのどかが不意にバランスを崩した
「っ!!」
階段の端を歩いていた為、不運にも地面へと投げ出される形だ
『やっぱり』と思う間すらも惜しく、横に置いておいた杖を右手に掴み、腰掛けていた石段から立ち上がる
そのまま前に飛び出すのと同時に杖を構え、念じた
すると、悲鳴を上げながら落下していたのどかは、ネギが地表近くに発生させた空気のクッションによって散らばった本と共に滞空
彼女が地面にぶつからない内に近づこうと魔力を込めた右脚で地面を蹴る
そのたった一歩で数メートル離れていたのどかまでの距離を失くし、地面と彼女との間に出来た僅かな空間に両腕を差し出す
タイミングを計ったかのように、その場から空気のクッションが消え失せた
「だ、大丈夫? 宮崎さん?」
のどかに声を掛けつつも、彼女が意識を失っていて魔法を使ったことに気が付いていないと知り少し安堵する
もちろん、怪我をしていないことに対しても
「あ、あんた……」
突然階段の上から聞こえた声に、ネギの顔から血の気が失せる
恐る恐る仰ぎ見た彼の目に飛び込んできたのは、のどかのクラスメイトにしてネギのクラスの生徒、アスナだった
〜あとがき〜
ここまでで大体漫画の1話目の半分ぐらいでしょうか?
とは言えこの程度を書くのに随分と掛かってしまった……
次回は出来るだけ早く仕上げるようにします