〈白夜の降魔・風の聖痕編〉

 

第一部・風の聖痕

 

 

第五幕   『巫女姫』

 

 

 

 

 

 

「クソッ……ヤツはまだか?」

 

 大きく開けた広場にて―――――いらいらした様子で〈結城 慎吾〉が何度目になるのか解らないぼやきを発する。そして……

 

「もうすぐだろ」

 

 これもまた幾度目かになる言葉を、武哉はウンザリした様子で返す。

 一緒に連れてきた風牙衆の術者によって、報告は随時送られている。和麻は何も知らずに、導かれるままこちらに来ているという報告が。
 自分はもちろん、慎吾にも送られているにも関わらず、彼は先程から何度も同じ事を繰り返しているのだ。

 

「何やってんだよ、風牙衆の能無しわよ! 和麻の一人くらい、さっさと連れて来いってんだ!!」

 

 どうやら今度は、苛立ちの矛先を着実に任務を果たしている風牙衆に変えたらしい。遠くにいる…だが、確実にこちらの言葉を聞いている風牙衆の術者を罵る。

 

「そう言うなよ、風牙衆はこういう仕事・・・・・・に関しては有能だぞ」

 

 武哉はそれを止めることなく、あえて奇麗事を言う事で慎吾を煽る。
 彼は景太郎とは違い、実に分家の術者らしく風牙衆を庇ってやるつもりなど更々ない。

 

「けっ。こそこそ嗅ぎ回るのが得意だからって、何の自慢にもならねぇよ」

「はは、そう言うなよ。あいつ等は満足に戦う力も無い哀れな連中なんだ。こんな半端仕事にでも使ってやらないと可哀想だろう?」

「違ぇねえ、ぎゃははははっ!」

 

 タガの外れたような笑い声を上げる慎吾を後目に、武哉は狙い通りに事が運んだ事を喜んだ。

 数十秒おきに同じ言葉を繰り返されるよりもはるかにましだと……

 

 そんな折―――――

 

『来ました。五百メートル前方です。まだ気がつかれていない模様です』

 

 二人の耳に和麻を見張っていた風牙衆の術師の声が流れてきた。
 風術師が使う風術の一つ『呼霊法こだまほう』と呼ばれる伝言法だ。風に声を乗せ、遠隔地まで…術者の力量次第で距離は変わるが…声を届けることができる。

 

「そうか……くくく、来たぜ〜、来やがった!!」

 

 目をギラつかせながら、慎吾が待ってましたと言わんばかり、感極まった雄叫びのように言葉を発した。

 そんな慎吾を見ながら、武哉が気付かれないように一歩下がって距離を空ける。こんな人間と仲が良いと、お世辞にも思われたくはない……という行動なのだろう。
 もっとも、心の距離はゆうにその数十倍以上離れていたりする。

 

「和麻の野郎、必ずぶっ殺してやる。まずは手足から……いや、指先からじっくりと焼いて………」

 

 なにやら物騒な段取りを考え始めた慎吾の言葉を聞き、焦った武哉が慌てて声をかける。

 

「おいおいおい! 頼むから、冗談でも会った瞬間にそんなマネはよしてくれよ。いきなりそんな事して和麻を殺して見ろ、宗主のお怒りが―――――いや、その前に景太郎の奴に俺達が殺されるぞ。とばっちりは絶対ごめんだ」

「チッ……わかってら」

 

 一気に捲し立てる武哉に、慎吾はあからさまに舌打ちしながら了承した。

 神凪邸を出る前に感じた……いや、再認識させられた景太郎への恐怖は、慎吾の心の奥深くにまで刻まれている。数年前……何かと生意気だった景太郎を武術の練習と称して叩きのめそうとした同じ分家の子供達が、逆に撲殺一歩手前までされた時の、あの凍りつく眼差しを見た時からずっと……

 

「へっ…関係ねぇ……絶対に……骨を一本一本……」

 

 だが、慎吾の怒りはそれすらも凌駕しているのか、またも危ない事を呟きながら発作のように笑っている。
 その姿を見つつ、武哉がコンビ解消を真剣に考え始めたところで、目的の人物―――――和麻が現れた。

 自分達が先に待ちかまえているとも知らず、のこのこと(彼らの頭ではそうなっている)こちらに歩いてくる和麻に、武哉が気取った仕草で声をかけた。

 

「久しぶりだな、和麻」

「…………………」

「………………………」

 

 なぜか、長い沈黙が場を支配する。武哉は和麻の何らかのリアクション(返事なり動揺するなり…もしくは逃げるなり)を待っていたのだが、当の和麻といえば武哉の顔をまじまじと見て眉を潜めていた。どうやら思い当たらないらしい。

 

「俺の顔を忘れたか、和麻。この「ちょっと待て」―――――なんだ?」

 

 言葉を途中で遮られ、苛立ちを募らせる武哉。しかし和麻は気にする様子もなく、右の人差し指を額に当て、相手のことを思い出そうとしている。

 

「喉元まで出かかっているんだよな〜、誰だったっけ? あ〜……………そうだ、『四条』のとこの長男だ!!」

「『大神』家の長男だ!」

 

 さんざん思い出そうとした挙げ句に出た間違った答えに、武哉が怒鳴り声で訂正する。

 この時点で相方の分も冷静に対応しようと云う考えは忘却の彼方だった。

 

「ああ、そうだったそうだった。確か〈大神 武志〉だっけ?」

「俺は武哉だ! 武志は弟の名前だ」

 

 連続の間違いに武哉の怒りのリミッターが限界近くまで上昇する。もう後一押しで爆発する状態だ。

 そんな武哉の剣幕に、和麻はにやけた笑みで『どうどう』と手で制す。

 

「そんなに怒るなよ。最初の気取った登場が台無しだぜ」

「誰のせいだと―――――クッ、まぁいい」

 

 格下だと思っている者からの挑発に武哉は思わず手が出そうになるが、景太郎への恐怖が頭によぎり、大きく息をしながら怒りを奥底に沈めて(表面上)心を落ち着かせる。

 こんな不毛な会話は早く終わらせて、和麻を連れていって後は全て宗家に任せた方がいい……という結論だ。

 

(落ち着け…相手は所詮は和麻だ。こんな奴を相手に何を取り乱している)

「………用件はわかるな」

 

 血走った眼で今にも炎を放たんとする慎吾を抑え…最初はともかく、今は心情的には煽りたい気分……武哉は居丈高な口調で言葉を続けた。

 

「いんや、全然」

 

 和麻は正直に答えるが、その口調には若干挑発も含まれていた。そして和麻の期待通り、武哉の怒りが先以上の勢いで溢れ出し、こめかみに血管を浮かせた。

 ―――――が、それでも景太郎の脅しが未だに効いているのか、冷静に努めながら説明を始める。

 

「昨夜……神凪の術師が三人殺され、一人が寝込んでいる」

「ふ〜ん。で?」

「犯人は風術師だ」

「………」

 

 再度、場に沈黙が満ちる。それが暫く続いた後……

 

「んで? それがどうしたんだ」

 

 男同士で作る怪しげな雰囲気に嫌気…もしくは耐えられなかったのか、和麻が相も変わらずの口調で問い返した。

 

「宗主がご下問なされる。ついてこい」

「俺じゃねー、以上」

 

 話は終わったとばかりに二人の間を通り抜けようとする和麻。その時、和麻は突如として真横へと跳び、直後に先程まで居た空間が前触れもなく炎上した。

 その現象に、和麻―――――並びに武哉までもが、事の張本人である慎吾を見た。

 

「くっくっくっ…そーか、ついて来ちゃくれねぇか。ならしょうがねぇよな。後は力ずくで引っ張って行くしかねぇよな!!」

 

 絶叫と同時に発生した紅蓮の炎が慎吾の周囲を踊るように舞う。

 顕れた炎は慎吾の身体に纏わりつくが、服を燃やすどころか焦げ目一つ付くことはない。むしろ、慎吾は心地よさそうに目を細める。
 顕現された精霊は、術師を傷つけることはないのだ。服や装飾品に至るまで、全てを含めて。

 

手前てめぇを殺したらやばいからよ、手足を消し炭にする程度で勘弁してやる。だが、それは今だけだ! 宗主の用件が終わったら殺してやる。一週間くらい時間をかけてじっくりと……生まれてきた事を後悔するぐらいにな。そもそも、慎治を殺した手前てめぇがのうのうと生きている事自体が罪なんだからな!」

 

 更に猛々しく燃ゆる炎の中、常軌を逸した口振り、なおかつその狂笑ぶりを見せる慎吾を、和麻は珍獣を見るような眼差しで眺める。

 

「神凪じゃ、あんな奴を放し飼いにしてんのか?」

「いや……まぁ………」

 

 和麻の言葉に返す言葉がない武哉。さすがにアレと同一視されるのは武哉としても御免こうむりたい。

 

「おい慎吾…」

「うるせぇ! こっちが穏便に対処してやってるっていうのに、それを蹴ったのはこいつの方だろうが! こうなった以上、景太郎の奴にも文句は言わせねぇ!!」

 

 止めようとした武哉の言葉を遮り、慎吾があらん限りの怒声で言い返した。

 

「あ? 景太郎の奴と何かあったのかよ」

手前てめぇにゃ関係ねぇ!!」

 

 景太郎の名に反応して問いかける和麻に、慎吾が切って捨て、代わりに慎吾を止めることを諦めた武哉が答えた。

 

「宗家からお前を連れてくるように言われた際、慎吾の奴がお前を殺すって息巻いててな」

「見りゃわかる」

「………まぁ、いざ行こうというときに景太郎の奴と会ってな、慎吾の奴を窘めたんだよ」

 

 実際に景太郎が行ったこと〈窘める〉と言うよりは〈脅し〉だったが、和麻に言うことではないとわざとそう言った。

 

「だったら、そんな面倒なことせずにあいつが来りゃ良いじゃねぇか」

「景太郎だったら、お前をわざと逃がすと思われたんだろ。昔からあいつとお前は仲が良かったからな」

 

 その言葉を聞き、和麻が口の端を歪めた笑い顔になる。

 

 確かに、自分は神凪を出る前から景太郎と縁があった。だがそれは、一緒に術方の訓練をしたり、体術の組み手ぐらいだ。基本的に景太郎の師は重悟、和麻の師は厳馬…と、それぞれの父方が担っており、相手が欲しかったり、共通している部分を極偶に一緒に行う程度の縁しかなかった。

 和麻の記憶の中にある景太郎は、他者を寄せ付けない気配を常に身に纏い、触れれば切れる刀のような…いや、近づけば火傷ではすまない灼熱の炎のような雰囲気であった。
 それゆえに、景太郎と和麻との交友はあまり無い。分家・宗家を合わせた男の子供の中で一番だっただろうが……

 それでも、そんな儚い昔の義理を持ち出して景太郎が容疑者である自分を、養父であり恩人である宗主・重悟の命令に背いてまで見逃すとは到底思えなかった。
 少なくとも、四年前…記憶の中にある景太郎は、重悟に絶対服従であった。どんな理不尽な命令をされても、危険な退魔を押し付けられた時も、顔色一つ変えずに実行していた。

 

 もっとも、それは宗主の命令などではなく、景太郎を疎う頼道が先代宗主という地位をを利用し、押し付けていたことなのだが……それは今は関係ない事だ。

 

「それで、お前らが来たってわけか………随分と舐められたもんだな」

「なんだと……」

 

 最後の呟きを聞き咎める武哉。その言葉は“和麻如き格下”が自分達格上に言って良い科白などではない。

 

「慎吾……後で俺もできる限りフォローはする。殺さない程度に…喋れる程度にやるぞ」

「おお!!」

 

 待ってましたと言わんばかりに咆える慎吾。武哉も氣を高め、周囲に舞う炎の精霊を引きずり寄せ、自らの意に従わせる。

 炎を纏う慎吾は更に猛々しく、そして武哉の周囲が急激に温度が跳ね上がり、陽炎の如き様相を見せる。顕現すらしていない精霊が、物理現象を起こしているのだ。

 

「………今ならまだ間に合う。和麻、這い蹲って赦しを請え。そして大人しく従え」

 

 武哉のあくまで見下した最終通牒に、和麻は中指を立てて答える。

 

「面洗って出直してこい」

 

 その言葉を合図に、武哉が術を起動させ、慎吾が精霊を更に集めて炎を増やす。

 

「この馬鹿が!」

「死ねや、おらぁ!!」

 

 この瞬間、二人は勝利を確信していた。神凪一族の分家の中、若手のツートップである自分達の炎術を持ってすれば、和麻如き問題ではない。風術を身につけたらしいが所詮は和麻、どんな策を巡らそうとも凌ぎきれるものではない。

 

しかし―――――

 

ゴウンッッッ!!

 

 武哉の手の内に生じた炎の塊が、突如爆発的に膨張した。一瞬で術師の糸をはるかに超えるまで膨れ上がった炎は轟音を上げ、武哉の周りを荒れ狂う。

 そうなれば当然、武哉の制御を離れた炎が本人に牙を向ける。呼び出した精霊は術者本人を害することはないし、炎術師は炎の加護を受けた身、炎やその熱にはデタラメなほどに耐性があるが、生じた衝撃までも緩和することはない。

 爆発による衝撃波を全身に叩きつけられた武哉は為す術もなく、あっけないほどあっさりと昏倒した。

 

(くそ……一体何が……慎吾、後は―――――)

 

 『後は頼む』とでも言いたかったのだろうが、武哉の視界に入った慎吾は自分と同じく地面に倒れ、なぜか青紫色の顔をして痙攣していた。無論、意識など当の昔にないのは一目で解った。

 そんな慎吾の様子を把握する暇もなく、武哉は力尽きたように伏せ、意識を手放した。

 

 そして和麻は始終変わらずポケットに両手を突っ込んだまま、何も言うことなく地に倒れ伏した二人の間を通り過ぎ……数メートルほど進んだところで、ふと立ち止まって振り返った。

 

「やる気なら容赦しねぇぞ?」

 

 和麻の視線の先にあるのは一本の立木。その立木が急に音もなく斜めにずれて倒れた。
 音もなく、風の刃で切断された生木が、断面に沿って滑り落ちたのだ。

 その背後にいた見張り役の風牙衆の者は、晒された身を隠すことすら忘れて呆然と立ちつくす。そして、戦慄と共に悟った。

『奴は誘き出されたのではない…餌につられて、のこのこと姿を現した自分達こそ、愚かな狩りの獲物だった』のだと……

 

 

 


 

 

 

「まったく、お父様も心配性よね。あたし一人で大丈夫だって言ってるのに、いつになったら一人前だって認めてくれるのよ。そんなにあたしって信用ならないの?」

「そんな事はない、宗主はとっくにお嬢を認めているさ。でも、娘を心配するのは父親として当然のことだろ?」

 

 愚痴る綾乃を、四十代の男が宥めていた。

 綾乃は解けかかった封印の補強の仕事を命じられ、とある神社に赴いていたのだ。
 退魔師といえば、格好良く妖魔や悪霊を退治する者…と、アニメや漫画などの影響でそう思われがちだが、実際には『封印補強』や『自縛霊などの浄霊』といった日陰的な仕事も割と多い。

 今回の綾乃もそういった仕事だったのだが、現地に赴き、神社に納められた妖魔が封印された壺を見たところ、封印の劣化が激しく、封印の補強、及び再封印を断念し、中身を滅ぼすことを決めたところだった。

 

「そんな事言ったって、景太郎なんか煉と同じ位の歳にはすでに大きな仕事だってしてたじゃない。それも一人で……」

 

 義理の兄を引き合いに出し、なおも愚痴り続ける…というか、ふてくされた感じの綾乃に男が苦笑する。

 

「そりゃ、宗主には何らかのお考えがあってのことなんだろ。正直、坊主みたいな余所者には神凪あそこは肩身が狭いからな。周囲が親戚だらけの中に一人だけ違うなんて、結構辛いぞ? 現に風当たりは酷かったしな。そんな状況なんだ、誰よりも仕事をこなして周囲に認めさせるしかないんだろ」

 

 男の言葉に頷きつつも、綾乃は納得していない様子だった。

 綾乃も義理の兄ケイタロウの経歴を知ってはいる。そしてその強さも……約四年前、叔父を…神凪で現役最強の厳馬を、炎術抜きの氣と格闘術(両者とも体術だったが)のみの試合で、景太郎が圧倒的とも言える強さで降した強さも認めている。
 同じ条件で戦えば…自分は剣を使ったとしても、秒殺されかねない。それぐらい、剣術を身につけている綾乃とて理解している。

 が、理性アタマで理解しているからと言って感情がそうそう納得できないのが人間だ。綾乃も宗家の一員として誇りがあるゆえに、それととある理由でなかなか納得できなかった。

 

「でもさ、炎術だったら私の方が強いわよ。もちろん、炎雷覇を抜きにしてもね」

 

 自らの強みをアピールする綾乃。だが……

 

「確かにお嬢の『炎』は強いが『術』はまだまだだからなぁ。お嬢はまだ焼く対象を限定することもできないだろ? あの坊主はお嬢と同い年の頃には完璧に修得していたらしいじゃないか」

「うぐ……」

 

 現在、『炎術』の“炎”において綾乃が重悟、厳馬に次いでnOであることは自他共に認められている。更に炎雷覇という絶対的なアドバンテージもあり、炎の威力、総量は先の二人を除いて圧倒的に勝っている。
 しかし、こと“術”の部分においては、綾乃は景太郎よりも一歩も二歩も劣っているのだ。

 

「うう、雅人まさと叔父様が苛める……」

「顕然たる事実を言ったまでだ」

 

 拗ねたふりをする綾乃を男が……大神家当主の弟〔大神 雅人〕が一言の元に切り捨てた。
 分家の者にあるまじきぞんざいな口の聞き方だが、綾乃はそれを咎めるどころか、当然の事として受け止めている。

 この男、大神雅人は兄を遙かにしのぐ実力を持ちながら、当主の座を巡って争うことを嫌い、チベットの奥地まで修行の旅に出るという変わり者だった。
 日本に戻ってからは『綾乃のお守り』を任され、重悟の信頼も厚く、綾乃の初陣からずっと護衛役を務めてきた。

 綾乃もまた、この豪放磊落を絵に描いたような親戚をいたく気に入っていた。常に周りからお姫様扱いされてきた綾乃にとって、雅人の媚びることのない態度がこの上なく心地よいものであったのだ。

 そして今では、『雅人叔父様』 『お嬢』と気安く呼び合う家族のような間柄になっていた。
 それは綾乃から…否、神凪から常に数歩退いている義兄よりも親しいと言えるかも知れなかった。

 

「まぁ、何にしてもだ。宗主に認めてもらおうと思うのなら、こんな仕事でぐずぐず手間取らないでさっさと片づけるんだな。そうは思わないか? 武志」

「はいはい、分かりました。分かりました!!」

 

 雅人の言葉に綾乃は半ばやけくそ気味にそう返事をすると、壺に張られた封印の御札を乱暴な手つきで剥ぎ取った。

 本来なら、慎重に慎重を重ねて行わなければならない行為であり、退魔の仕事なのだが、綾乃はそんな事に構わず行った。
 彼女に言わせてみれば、『その方が手っ取り早い』そうだ。自分の実力に絶対の自信か身の程を知らない馬鹿にしか言えない科白だが、彼女は前者だった。
 そして、それが分不相応の自信ではないことを、雅人と一人の護衛役である青年は理解していた。

 

(相も変わらず少々不用心だが…まぁ、あの程度の封印で封じられる妖魔だ、問題はないだろう)

「その意気だ、お嬢。若い術者に勉強させてやれ。なぁ武志……武志?」

「は、はい!!」

 

 綾乃の姿に見惚れていた若い術者―――――雅人の甥である〔大神 武志〕は叔父に声をかけられ、我に返って慌てて返事をする。雅人はそんな武志の頭を軽く叩き、叱咤した。

 

「聞いてなかったな。お嬢に見惚れるのは良いが、封印はもう解けているんだ。いつ妖魔が飛び出すか判らないんだ、気を抜くなよ」

「き、聞いていましたとも! 叔父上の仰るとおりです。綾乃様の戦いぶりをお見せ頂ければ、これに勝る喜びはありません!!」

 

 憧れの綾乃の前で恥をかきたくない一心か、武志は必要以上に力を入れて微妙に遅い返事を叫んだ。その武志の綾乃を見る目には、尊敬を通り越した崇拝の色が見える。

 これは特に異常な反応ではない。武志のような同世代の術者にとって、綾乃は女神にも等しい存在なのだ。その姿を間近で見ることのできる護衛の任務を望まない者など皆無と言っても良い。

 

「ふ〜ん。そーいうもん?」

「そうです!」

 

 綾乃に直接話しかけられ、武志はその喜びを全身で表していた。

 綾乃はこういうむき出しの感情を向けられるのは好まない。自分がこのような世界でさえも“普通”とは隔絶した存在だと思い知らされ、いたたまれなくなるのだ。

 

「ふぅ……ま、いいけどね。ん、そろそろかな?」

 

 嘆息しつつも、綾乃は妖気の高まりを察知して解かれた封印の方へと向き直る。

 こんな時…これから戦いが起こるという状況で、綾乃は高校の制服を着ていた。これは単に学校から直行したというわけではない。
 真面目に学生をやっていれば、もっともよく着る服が制服となるのは自然の道理。そこで、重悟は綾乃の制服を特注し、あらん限りの呪的防御を施した一品を用意したのだ。無論、着替えを合わせて何着も。
 綾乃もその制服をいたく気に入り、学校はもちろん、退魔に挑む時には殆どこれを着て臨んでいた。

 

「さて……それじゃあ、そろそろいくわよ」

 

 綾乃が清冽な柏手を打つ。そして合わせた掌を引き離すと、両手の間を炎の線が繋ぐ。綾乃はその線を右手で掴むと、引き抜くように右薙ぎに振るった。
 すると線は更に伸び、一メートルに達した瞬間、炎の線が物質化して緋色の剣を形作った。

 鮮やかな緋い刀身は反りのない両刃の直刀。その刀身が黄金きんの炎を纏わせ、眩い輝きを放つその姿は幻想的なまでに美しい。

 この剣こそ、神凪の至宝『炎雷覇』。神凪の始祖が炎の精霊王より賜ったと伝えられる降魔の神剣である。

 

 刃の軌跡に黄金きんの粒子を舞い散らせながら、綾乃は炎雷覇を正眼に構えた。

 それと時を同じく、限界を迎えた壺が粉々に弾けとんだ。そしてその破片が本殿の床に落ちるよりも早く、壺の中から現れた何かから、真正面にいた綾乃めがけて白い何かが撃ち出された。

 綾乃は臆することなく真っ向から炎雷覇を振り下ろしてそれを迎撃すると、その白い物質は水が蒸発するような音を立てて焼滅した。

 

「粘液?」

 

 撃ち出された何かから途中に飛び散ったモノを見やり、綾乃は眉を潜めてそう呟く。そしてそれを発した大元の存在に視線を移すと……

 

「うあ……」

 

 綾乃は思わず呻き声を洩らした。

 そこに居たのは―――――数えるのも嫌になるくらいの複眼、足は確実に八本以上、全身を剛毛で包み、かさかさと長い複数の足で動く節足動物…が、元であろう化け物。

 見る者が生理的嫌悪を及ぼすような、おぞましい姿をした巨大な蜘蛛の妖魔だった。

 

「ほぅ、土蜘蛛か……意外だったな」

 

 呟く雅人。土蜘蛛は下級妖魔の中でそこそこ強い部類に入る。どこの誰が封印したのか知らないが、その者はそれなりの術者であった事が推測できる。

 

「(この程度に加勢は要らないと思うが)……お嬢、手を貸そうか?」

「けっこお」

 

 雅人のありがたい御言葉(単なる確認行為)に即答で返す綾乃。

 次期宗主である自分が泣き言を言うなど許されるはずもないが、それ以前にこの程度の相手に加勢してもらったなどと知られ、父に失望される方が怖かった。それに比べたら、蜘蛛やゴキブリと戦った方が万倍マシなくらいだ。

 

(おいで……)

 

 炎の精霊に呼びかける。肉声こえは必要ない、ただ心からの声に惹かれて精霊が集まり、綾乃の持つ炎雷覇に飛び込んでゆく。それと比例し、緋色の剣が纏う炎が急速に輝きを増す。

 意思こえの届く限り綾乃は周囲の精霊達に助力を請う。他の術者達の様に命令し、支配することは決してしない。それがどれほど傲慢な事か、炎術の師でもある重悟ちちに何度も教えられている。

 

『我々は対等なのだ』

 

 重悟は常にそう語る。精霊は世界の秩序を守る存在。神凪一族は、精霊王との契約によりただ単に力を授かったわけではない。精霊達の協力者たる任を負ったのだと。

 綾乃は理解している。自分の力が借り物に過ぎない事を。世界を乱す『歪み』たる魔性を封じ、滅するために一時的にその大いなる力を与えられたという事を。
 ゆえに命令はしない。そんな事は必要ないから……正しい願いに精霊達は必ず応えてくれるのだから。

 世界に対する敬意を忘れないように、〈強力な力を得た〉と傲慢にならないように綾乃は常にこう呼びかける。『お願い、力を貸して……』と。

 綾乃はこう考えているが、実はこれは当たり前のこと。その当たり前の事を、精霊術師の殆どが失念している。いや、当たり前の事だからこそ、誰もが忘れているのかも知れない。
 火の、水の、風の、地の恩恵を、当然のものとして忘れてしまった、一般の人間と同じく……

 

「す、凄い……」

 

 綾乃が集めた膨大な数の精霊を感じ、武志が呆然と呟く。雅人に言われ、一応…と支配しておいたはずの精霊ですらも根こそぎ持っていかれた。
 初めて目の当たりにする宗家の力はまさに桁外れと言うほかになかった。

 

「ああ、凄いだろう」

 

 我が事のように誇らしげに笑う雅人。そして、それはすぐに苦笑に変わった。

 

「さっきはああ言ったが、本当は勉強になるわけないんだよな。俺達がどう足掻こうと、あんな事できっこないんだからよ」

「…………」

 

 叔父に返事する事すらも忘れ、武志はただひたすらに神剣を構える綾乃だけを見ていた。

 しかし、もしこの場に重悟が居たら、感心とはまったく別の意味の溜息を吐いていただろう。
 集めた精霊の量だけは、確かに(分家から見れば)瞠目に値するが、問題は別……炎の密度が薄いことだ。早い話し、収束がろくにできていないのだ。今の綾乃は殆ど炎雷覇に炎を纏わせたにすぎなかった。

 とはいえ、この状態でも分家にしてみれば十分すぎるほど凄い。目前の下級妖魔など、かすりでもすれば一瞬で消滅させるであろう。
 だが…だからこそかもしれない。雅人は綾乃の炎の強さに目を奪われ、未熟な点に気付けないのは……

 

 とにかく、綾乃は炎を纏わせた炎雷覇を構えたまま、こちらを窺っている土蜘蛛と対峙し続けていた。

 

(どうしよう……)

 

 胸中で呟く綾乃。妖魔を消し炭にするに十分な量の精霊は集めた。が、この距離で確実に仕留める自信はない。手に持つ炎雷覇は呪法具であると共に剣。その形状である以上、直接斬りつけた方が最大の威力を発揮する事ができる。そもそも、遠距離攻撃にしても、一撃で駄目なら何度も行えばいいだけだ。
 だというのに、綾乃は土蜘蛛に対して斬りかかるのを躊躇っていた。その理由とは……

 

(斬ったりなんかしたら、得体の知れない粘液が飛び出したりして……それに火球なんかぶつけて爆発させたら、飛び散った破片が身体に降りかかったり……それにそれに、もしも雌だったりしたら、斬り裂いた所から小蜘蛛がワラワラと……いやぁぁああああっ!!)

 

 ありえる(?)かも知れない状況を想像し、綾乃は鳥肌を立て、脳内で声にならない絶叫を上げる。もしも武志が綾乃の思考を読む事ができたなら、崇拝の念に少なからず修正を加えていたかもしれない。

 そんな時、懊悩する綾乃の様子を隙と見たのか、土蜘蛛がカサカサと長い足を器用に動かして反転する。

 

「逃げる気?!」

 

 逃げられでもしたら、それこそ父に失望されると思った綾乃は、先程までの懊悩を忘れ去り、土蜘蛛に向かって走り出す。

 しかし、最初から逃げ出す気など無い土蜘蛛はそのまま踏ん張ると、こちらに迫る綾乃に向かい、尻の先から白い糸を吐き出した。

 

「その程度!」

 

 炎雷覇を振るい、緋色の一閃でその糸を迎撃する綾乃。

 緋色の刃から迸る黄金きんの炎が、吐き出される土蜘蛛の糸をことごとく蒸発させるが、とめどなく吐き出され続ける糸の前に焼く速度が間に合わず、それ以上近づくことができない。

 

(面倒ね…ちまちまやってたらきりがないし。ここは一気に一撃で決める!)

 

 そう考えた綾乃は足を止め、精神を集中して意志を鋭く研ぎ澄ます。その綾乃の意思に応え、精霊達はその力を強め、炎が一気に輝きと勢いを増す。

 その猛々しく燃ゆる黄金きんの炎を纏う炎雷覇を上段に振りかぶる。その間も白い糸が飛びかかってきているが、炎の余波により綾乃に届くまでに蒸発している。

 そして綾乃は軽く息を吸うと…渾身の力を込めて炎雷覇を振り下ろす。縦に一閃された緋色の刀身から迸る黄金きんの炎―――――最高位の浄化の炎は白い糸をものともせず全て焼き払い、そのまま土蜘蛛本体に迫り、

 

ゴウンッ!!

 

 ―――――接触と共に爆発、周囲に爆音が轟き、土蜘蛛が炎に覆い尽くされる。

 

「やった……よね?」

 

 炎が徐々に鎮まってゆく中、自信なさげに呟く綾乃。彼女も炎越しに感じたのだろう、その手応えの無さを。

 それを証明するかのように、鎮まりゆく炎の中から白い繭のようなものが綾乃の目に映った。
 思わず目を見張った綾乃の目の前で、それはピキピキという音を立ててひび割れてゆき―――――『パリンッ』という甲高い音と共に完全に割れ、中から無傷の土蜘蛛が現れた。

 おそらく、あの糸には霊氣を遮る性質でもあったのだろう。それを持って己の姿を覆い隠し、綾乃の炎から自分の身を護ったのだろう。さらには、繭に籠もりつつも糸を吐き続け、蒸発する先から補充もしていたと予測される。
 綾乃が全力を出していれば…もしくは密度を上げていれば耐えきれなかっただろうが、これは完璧に低級妖魔と侮って必要最低限の火力を見誤った綾乃の落ち度だ。

 

「やって………くれるじゃない」

 

 それを見た綾乃が抑揚のない声で呟く。傍目には冷静に見えるが、こめかみ辺りの微妙な引き攣り具合がその心情を現している。

 全力ではないとはいえ、今の一撃を完全に防がれたことに、プライドを大きく傷つけられたのだ。

 

「たかが虫けらの分際で………!!」

 

 叔父達の手前、声を荒げる事は無い。だが、その分怒りは内に溜まり、高まる怒りに応じて更に膨大な数の炎の精霊が綾乃の元に集う。
 実際の炎として具現化していないものの、その数は本当に膨大で、その場が火山の火口にも匹敵するほどの火の精霊に埋め尽くされる。

 

「さぁ、覚悟はいい………」

 

 綾乃は心底怒ってはいるが、我を忘れているわけではない。冷静に怒りをコントロールし、集まった力を余すことなく制御下に置き、強く……強く精霊に呼びかける。

 そして今度は全方位にではなく、細く絞った意思を特定の場所に向けて集中する。

 その二つの行為を終えた綾乃は、炎雷覇を身体の前で垂直にかざし、慎重に狙いを定める。そして深く息を吸い……呼気と共に鋭い気合いを放つ。

 

「はっ!!」

 

 直後、土蜘蛛の体内で炎が弾けた。その炎に圧されて膨らんだ腹が裂け、炎が小さな火柱として立つ。

 そしてその小さな炎を目印に、境内に集まっていた炎の精霊が殺到、それによって炎は爆発的に増大し、土蜘蛛を抵抗する間も与えず焼き尽くし、今度こそ跡形もなく、灰すらも残さず消滅させた。

 

 それは比喩でも何でもない、本当に後には何も残っていない。土蜘蛛の身体の欠片どころか飛び散っていた白い糸も、撒き散らしていた妖気の残滓すらも、後からもなく浄化していた。

 今まで妖魔が居たという痕跡は何一つ無く、逆に神社らしい清浄な〈氣〉が境内を満たしてすらいる。

 

 今の攻撃…外からの攻撃を防がれるのであれば、内から攻めればいい。という安易な発想の元に行った行為だ。だが、言葉にすれば安易で単純だが、実行するのは至難を超えて不可能に近かった。

 

 この世界のあらゆる現象に精霊は関与している。多少の例外はあれど、精霊は生物の生命活動にも関与している。
 体内に水分を有する存在は水の精霊の影響を、熱量を持つ存在は全て体内に火の精霊を宿しており、その精霊に異常があると、体調もまた異常となる。水の場合は脱水症状など、火の場合は高熱などだ。

 この火・水・風・土の四つの元素が揃って一個体と考え、たとえ妖魔でも現世に物質化した以上、この法則から外れることはできない。四つのバランスは様々だが、必ず含まれている。
 しかし、一般に他者の体内の精霊を制御することは不可能だといわれている。生物の生存本能は無意識になるほど強く、生命の源とも言うべきモノを他者に操作されることを許さないからだ。
 早い話が、力の無い者でも、内にある精霊…チカラを無意識に制御している。と、云うことだ。

 だが、この世には『絶対』はない。並の天才では他者の内包する精霊に干渉することは叶わないが、それすらも…理論限界というものを鼻で笑い飛ばして楽々と踏み越える者がいるのだ。

 

 こういう言い方をすると、妖魔より弱い人間相手に絶対的に思えるが、実はそうでもない。確かに一般人のレベルでは絶対的に有効だが、己を完璧に律するもの……術者などに対しては、有効打にはなり得ない。

 氣を扱う『武芸者』や魔術を行使する『術者』などは、己が内にある力を完璧に律し制御する事ができる。ゆえに他者からの…綾乃のような非常識な干渉すら撥ね退け、無効化キャンセルする事ができる。
 しかし、それは意思力次第とも言えるのだが…そもそも、相手の体内に無理矢理干渉しているので、余程の未熟者ではない限りは抵抗できる。

 

 ともあれ、この様な事を平然と実行できる綾乃…神凪宗家は、正真正銘【非常識な存在】であると言うことだ。

 

「ふふん、ざっとこんなものよ」

 

 綾乃は後ろに振り返り、雅人に得意げな笑みを見せる。

 

「さぁ、一仕事終わったし、そろそろ帰りましょうか」

「ああ、ご苦労さん。ほんとに力を貸す必要がなかったな」

 

 雅人もまた、男臭い笑みを浮かべながら綾乃を迎えた。

 

「当たり前じゃない。この程度の奴なんか目じゃないわよ」

「それもそう「その通りです!!」―――――武志?」

 

 頷こうとしていた雅人の言葉を、傍にいた武志が上擦った声で遮る。よく見れば瞳が潤み、その顔も紅潮していた。

 可憐な乙女がそうなれば可愛らしいのだろうが、男が行っても気持ち悪いだけだった。

 

「綾乃様の御力の前に、あの程度の存在などものの数ではありません。たとえ如何様な存在が現れようも、須く綾乃様の前に平伏すことでしょう。なぜなら綾乃様は美しくも気高く、そしてお強い方なのですから。それに―――――」

「はいはい、お嬢の活躍を見て興奮したのは分かった。分かったからもうその辺でやめとけ、武志」

「あ……はい…すみません」

 

 雅人に制止され、些か興奮しすぎて行った自分の行為を恥じたのか、武志が気まずそうな顔で俯いた。

 

「まぁ、それぐらいでいいじゃないの叔父様。仕事も終わったことだし、早く帰りましょう」

「ん、そうだな。ほら、武志。何時までもしょぼくれてないでしゃきっとしろ!」

「は、はい!!」

 

 雅人に背中を叩かれ、項垂れていた武志は一気に背筋を伸ばす。そんな平和な光景を見ながら、綾乃は微笑んだ。

 

 

 

「くくくく…………」

 

 そして―――――そんな三人を、少し離れた所から見ている男が笑う。

 これから先に起こるであろう惨劇を気付きもしない、哀れな三人を嘲笑うように………地獄のそこから響く、怨嗟の声のような笑い声をあげていた。

 

 

 

 

 

 

 

―――――第六幕に続く―――――

 

 

 

 

(あとがき)

 

 今回はほぼ神凪サイドのお話です。しかも景太郎そっちのけ……科白の一行もありません。いいのでしょうか、これで……

 とりあえず、随所に景太郎の存在感はありますが…足りませんよね。やっぱり……まぁ、次回への複線としてお読み下さい。

 と言っても、次回も景太郎の出番がありません。原作を知っている方ならわかっておいででしょうが……それでも、少々変わっております。本当によろしければ読んでやって下さい。

 

 

 それでは…………ケインでした。

 

 

 

 

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