前書き

ネタは夢夢。読んでる最中に解る人だけ解って下さい。

 

 それでは後編です。

 

 

 

    ラブひなSS
  『白色悪夢〜LightMare Syndrome〜症候群』
     後編

 

 

 

 

 何の前触れ無く思い出されるのは、中学へと入学した時の記憶。

 

その時………
私は自分が怖かった。
たかが十二歳の思考回路には、一線を危する思いばかりが詰まっていたから。

 

「私は、最低だ……」
何度も続く自己嫌悪。

 

兄のシャワーシーンを覗いた事も有る。
四度目ぐらいになると、脱衣所で兄の衣服の匂いを嗅いだりしてた。口に銜(くわ)えて声を殺し、バレないかとドキドキしてた。
とても…………興奮してた。
トイレの音を聞いた事も有るし、外泊で居ない時は兄のベッドで寝た事も有る。
お兄ちゃんの私物を使い、私の身体はドロドロに溶けて行く。
その度に甘い吐息を吐き出し、その度に「最低だ」と吐き出し、その度に自己を嫌悪して呪う。

 

「私は、最低だ……」

 

発端は六歳の時。親の部屋で裏ビデオを偶然見つけて再生した時に、私の『普通』は無くなった。
「ばか…………簡単に見つかる所に置いとくから」
七歳で慰めを覚え、九歳で『したい』と考え始めていた。
ませたガキから、変態へと悪質進化した時期。
対象は自身の兄で、気付いた時には好きだった憧れの人物。
どこが好きだ? と問われれば『全て』と答え、
いつから好きだ? と問われれば『一目見た時から』と答える。
そんな愛しい兄と出来たなら、どんなに幸せだろうと。幼い頃からずっと妄想を膨らませてた。
この禁忌とされる思いを抱く事が、こんなにも辛いとは微塵も知らず。

ほんの一時は、彼女に見える様に、それっぽい言動や振る舞いをしようとしてた。しかし一時。直ぐにボロは出る。
兄が成長する度、知り合いが増え、友達が増え、私達の関係が露見する。

お兄ちゃんに悪い女が付かない様に。お兄ちゃんの為だ……何て、自分には言い聞かせてたけど。

 

「自分の為でしかないよ」

 

この考えも、
兄を守る為か? と問われれば『YES』と答え、
自分の為か? と問われても『YES』と答える。
結局は兄を独占したいだけ。
算高で、利己的な…………Egoistic Virgin。

 

 

―――――――――――――――――――ッ。

 

 

懺悔は済んだ。走馬燈はもう良いわ神様。
眼を開けば天国に居る?
それとも地獄?

 

…………なぁんてね。お兄ちゃんのいない世界なんて、どこも地獄よ。

 

だから来世は、
次に生まれて来る時は、
いえ、次に生まれて来る時も。

お兄ちゃんの妹になりたい。
今度は、頑張れる気がするから……

 

 

  〜 LightMareDays 4日目−1 〜

 

 

 

 

 兄の存在しない地獄を直視する為に、瞼を……ゆっくりと、開く。

 

 

白の光が溢れ、

 

「あ、れ?」
初見で両の眼に写るのは驚愕。
驚愕の白と黒。
驚愕の表情を浮かべる、白と黒。
「イタっ……」
新たな傷を感じ、右肩を左手で押える。
「たっ」
ダメージ把握。何て事はない。服は裂けているが、単なる掠り傷。敢えて言うなら、押えてる左手のが重傷。
「と」
問題が有るとすれば、空手で腕を振り下ろしたライトメアに、空手で腕を突き出しているナイトメア。

 

…………ぶっちゃけ、勘弁して欲しい。
地獄に来てまでコイツラの顔を見たくないよ。
それとも、これが地獄の刑なの?
私は地獄に居るんだ?
だとしたら悔しい。
何年待ったって、お兄ちゃんはやって来ない。お兄ちゃんは、天国に行くだろうから……

でも、でも。
地獄の炎に身体を焼かれても、この想いは消えない。
何度生まれ変わっても、何度死んでも、いつか必ず巡り逢う。
母親だったとしても、
子供だったとしても、
男だったとしても、
猫だったとしても、
花だったとしても。
これは誓いだ。
立場は違えど必ず。お兄ちゃんの側に居る存在で在りたい。きっとそうなる。
「いつ、生まれ変われるのかしら……」
願いが言葉へと出る程に私の想いは強く、
「何をした浦島可奈子ッ!!?」
写る驚愕は大きかった。
「ライト、お嬢のマインドは抜け殻よ。落ち着きなさ……」
「落ち着けるかよッ!! 消えた処か再召も出来ないんだぞ!!?」
白が両手で自らの頭部を押えて震え、黒は白の肩を抱いて落ち着かせようとする。
「この俺は準神とは言え神だ。それも、俺が造り出した『夢無世界』で、何の影響を受ける? 何で魔法が解除される? キャンセルされる? 答えてくれよ姉さんッ!!」
白は信じられないんだ。
怖がっているんだ。

恐怖とは即ち知らぬ事。
考え及ばないから恐怖する。

「可哀相なライト。お嬢を早く殺して、私達の世界に帰りましょう?」

未だ存在する鬼の右腕、鬼の角。
「はぁ……と言う訳なのよ、バイバイお嬢。貴女の恨みは果たせないけど……それを見てる分には、まぁまぁ楽しめたわ」
怠惰で吐かれた溜め息と台詞が終わり、無造作に鬼の爪が私の首を掴む。
「あっ……」
ツプリと鬼爪が首に食い込み、私は短い悲鳴を上げる。
死ぬのかなぁ……
もう地獄に居るのに、また死ぬんだ私?
「貴女を殺したら、元の世界に戻るわ。ここには二度と来ない。本当に、サ、ヨ、ウ、ナ、ラッ! お嬢ぉぉぉぉぉッッ!!!」
黒の表情が険しくシフト。鬼の右腕が更に膨張する。
「がっ、ぁぁっ……」
気道が急激に締め付けられ、呼吸を止められ、私の意識は崩壊。無意識で出す醜い呻き声は誰に宛てた物か?
「はは、浦島可奈子……死ねよ。お前が死ねば、きっと謎は解ける。安心して世界に帰れるんだ!!」
嘲笑う、狂気に塗れたライトメアの喜々顔。
……最初は白に斬り殺され、次は黒に締め殺される。
二度も訪れる、これが最後の光景?

これが罰ですか神様? 自らの兄を愛した罰ですか?
…………それなら、お兄ちゃんは私を『愛していませんように』…………
この苦しみをお兄ちゃんにも与えてしまうなら、私を嫌っててくれたって良い。
スケベでバカな妹だ、ってケナしてくれても良い。
私が一方的に愛してただけですから。どうか、どうか神様、お兄ちゃんには罰を与えないで下さい。
どうか神様、どうか……

 

そして私は眼を瞑る。
愛した兄の無事を祈りながら。

 

 

 

 

――――――ザッ。

 

 

 

「そう急(せ)くな。ゆっくりしていけよ、ライトメア」

 

 

そして私は幻聴する。悲しく成る程に愛し過ぎた、この世でたった一人の愛しき声を。

 

お兄、ちゃん?

 

「あぁ!? 何で貴様が俺の名を思い出せる?」
「ッッ!? ライト、あの『武器』こそヤバいわ。一度距離を……」

言葉の結末。私の首は開放され、白黒の気配が近くから失せる。
執り代わり存在する気配は、寄り掛かる巨木の後方。
「すまない可奈子……随分と遅れた」
眼を瞑っても感じられる愛する足音。愛する声。
「可奈子……こんな傷だらけになってまで、俺を守ってくれてたのか?」

「あっ、ぁぁっ……ぅぅ」
そのセリフで眼を開ける。お兄ちゃん見ないで! そう言いたいのに、出て来る音は擦り切れ声。
「喉も潰されてるのか!?」

「あぁ、ぃで。あぁうぃ……」
兄の顔は正面。片膝を着いて視線の高さを合わせ、悲しみを多重に浮かべた瞳で、私の頬に左手を添える。
「あぁ、ぃで。あぁうぃッ!!」
私は、泣いてた。
涙を流して、伝わらない言葉を続けて、私を見ないで、と頬を濡らす。

 

違う。
違うよ神様。
こんな形で逢いたかったんじゃない。
こんな哀れみを貰いたかったんじゃない。

自慢だった髪は痛み、
顔は擦り傷と血で汚れ、
喉を半分潰され、
右肩を斬られ、
左掌には穴が開き、
腹部には二ヵ所の刺し傷。

こんな姿、死んでも見せたくない!! 見せたくない、のに。

「声を出すな可奈子……軟気功だ。傷は治らないが、喋れるぐらいにはなる」
そう言って頬に添えていた手を喉へと滑らせ移し、暖かい体温で私の喉を癒す。

「やっぱり、夢ね……」
お兄ちゃんが気功を使える筈も無いし、
「お前の受けた傷、俺が百倍にして返してやるから……」
こんな私想いの言葉を掛けてくれる筈も無い。
「もう、休め」
それじゃあ、次に眼を覚ました時には、何処に居るのかしら?

 

疲れ切り、
私は、
眼を、
閉じた。

 

 

 3

 

 

 眠れる可奈子の身体を横たえ、その脇に童子切を置く。
「久し振り、久し振りだよマジでさ……」
大地に苛つきをブチまける様に、強踏してムーンサルト。空中で身体を半回転捻り、可奈子から数メートルも離れて白黒の二対と対峙する。
「こんなにも誰かを殺したいと思ったのはなぁ、ライトメアッ!!」
殺せ、殺せ、殺せ。
白を、黒を。自らが造り出した棺桶から決して逃がすな。
「はぁ!? 何言ってやがる。初級呪術にも簡単に引っ掛かる奴が、えぇ!? 何処のカスが、誰を殺すってぇッ!!? 」
白い羽を生やした蛾。
害虫だ、殺してしまおう。
「なーる、タネは理解したわ。そう言うわけね? だから魔法がキャンセルされる」
黒い羽を生やした蝙蝠。五月蠅いな、さっさと殺してしまおう。
「この世に仇成す邪悪を穿つは……」
両脚で地面を踏み直し、ガッチリと足場を固定。眼前で両腕をクロスさせ、浦島が怨敵を見据えて睨む。
「浦島八卦が断罪槍、浦島景太郎……」
さぁ、殺すぞ神様!!
「推して参る!!」

 

 

 END OF LIGHTMAREDAYS

 

 

 掌が良い。と拳の先人達は言う。

 

掌底、平拳、正拳、抜手、指拳。
拳の握りは数有れど、掌底こそが相手を選ばず確実にダメージを与える術(すべ)だと。拳の先人達は言う。
その気になれば、女子供でも使いこなせる拳。
筋力では無く遠心力。
強靱さでは無く柔軟さ。
外からでは無く、内から壊す掌の拳。気を纏えば八卦掌へと変わる臨機応変な鎧袖一触拳。
そこまでにメリットが有り、目立つデメリットは何も無い。なれば拳の先人達は言うだろう。「掌こそが最強の拳だ」と。

 

しかし、はたしてそうか?

異議を唱えるのは若き拳人。
掌が良いのならば何故、他の拳が存在するのか?
平手、正拳、抜手、指拳。それらが掌と同等に必要だから存在するのではないか?
本来は使い手の修練差だけで、五拳に差は無いのではないか?
そこで若き拳人は、「なればこそ」と思う。
掌と対極の拳、指拳を極める事こそが、新たな拳の開拓に繋がるのではないのかと。
母指(ぼし)、示指(しし)、中指(ちゅうし)、薬指(やくし)、小指(しょうし)。その中で使うのは一本。母指のみ。

「だがしかし」、
それを見た拳の先人達は嘲笑う。
相手の身体が鋼の様に固ければどうするのか?
鍛え上げられた肉体に指一本の指拳は有効なのか?
そう問われ、若き拳人は嗚呼と哭く。
拳が衰退していった過程に心から嘆いた。
そんな考えだから拳は衰退するのだと。
だから頼らねばならない、氣に。
だから武の最強の座を渡さねばならない、魔法(ペテン)に。
だから証明せねばならない、最強の武を。

生涯の殆どを鍛練に費し、拳人は拳神と成る。
そして現代、その拳と意志を受け継ぐは一人の青年。
受け継ぐは指拳。完成された拳の集大成。
受け継ぐは証明。引き起こす『武の下克上』。
伝えられし積年の願いが、代弁者を代えてここに成就する。

「この世に仇成す邪悪を穿つは……浦島八卦が断罪槍、浦島景太郎」

さぁ、現代の拳神よ。

「推して参る!!」

最強を証明せよ。

 

 

 1

 

 

 その早さ、天翔ける星の閃光。

 

四の腕と四の脚から繰り出される無呼吸連撃。
相手を畳み掛けるべくして放つ無制限弾膜。
『喰らえ』『喰らえ』と、一撃毎に祈りを付加して擲(なげう)たれる会心の一撃達。
されど見よ。
その祈りは高望みである。
そして知れ。
その願いは決して叶わぬと。
「くッ……どうなってんだ!!?」
責め手は二人、受け手は一人の圧倒的有利な展開。
「全力で飛ばしてるのに!! どうして!!?」
責め手は二人、受け手は一人の圧倒的有利な展開………だった筈。
優劣は直ぐに五分と成り、
「お前等はペトリファイドか? 純粋な殴り合いで、浦島の名に勝てると夢見るなッ!!」
責め手が一人、受け手が二人に。狩る側と狩られる側が事実シフト。
二人が繰り出す拳と脚は、攻撃する為では無く攻撃を防ぐ為に出されている。

「ライト、この距離で打ち合うのは!!」

拳神が放つは命奪の拳。
指拳を放てば肉を抉り、
正拳を放てば骨を砕き、
平手を放てば管を裂き、
抜手を放てば臓器を削る。

「俺が押されてる? 引くってのか!? クソがッッ!!」

どれもが必殺。
もし拳神の猛攻を凌ぐ手立てが有るとすれば、それは純粋な身体能力。幾年の歳月を鍛練に費やして得られる身体能力だけ。十歳やそこらのガキではどうしようもない、まして魔法(ペテン)に頼るなど愚の骨頂。この状況では糞の役にも立たない。
だが、意識を高め、簡単な一節魔法を使うとしての詠唱、魔法の名唱、放つ動作。この四行程を僅か0.5秒で行える者が存在する。一部の才有る者と人の力を超えた者。拳神と対する二人も漏れずに該当する。これが最速。最速の発動時間。

「ほらどうした神様(ペテン師)? 遠慮は要らない。お得意の魔法を使って見せろよ!!」

されど悲しいかな。拳神を前にして0.5秒と言う時間は、秋日に夜を願う蛍の命よりも長い。拳神は0.01秒で相手の喉をブチ破るだろう。
他の武では追い付けない……百分の一、千分の一の世界がここに有る。

神殺しを最良の糧に、最強の武は解答されるだろう。

 

 

 後編完。

完結編に続く。

 

 

 後書き

すみません。まだ続きます。 
携帯要領が一回で間に合いそうになかったので、途中で区切りました。
次で終わります。
それにしても、急いでいるとは言え、いつも途中の終わり方グダグダですなぁ。精進します。

 

 

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