前書き

ネタは北斗、鬼浜、カイジ。読んでる最中に解る人だけ解って下さい。

 

 それでは中編です。

 

 

 

    ラブひなSS
  『白色悪夢〜LightMare Syndrome〜症候群』
     中編

 

 

 

  〜 LightMareDays 3日目 〜

 

 懐かしさなら捨てて終おう
この真実な現実を思い起こして
 幻想な世界を夢と片付けて
悲惨が包んだ今を見つめよう
鈍色の月に誘われて
幸せの行方を占えば
偽善だらけなこの街に
二人の愛劇など有り得るのだろうか?

 

 

 2

 

 朝 起きたら 可奈子が 死んでた。

何て悪夢。

赤くて(あかくて)、
紅くて(あかくて)、
朱くて(あかくて)、
錆の香を漂わせ(とても)、
狂気を駆り立てる(あかい)。
俺を絶望に叩き落とし、より一層に色付く廊下に横たわる。

何て残虐。

死んでる可奈子を見下ろして、嗚呼。と哭く。
部屋に戻り、服を着替えて、リビングに戻り、死体を再見する。
嗚呼…嗚呼……
これは夢だ。と目を閉じて、夢で有ります様にと目を開く。
「はっ……何だよコレ?」
変わらない。
何等カワラナイ。
赤く冷たく色付いて。

廊下の上、血沼に浮かんで、可奈子が、死んでた。

嗚呼、嗚呼。嗚呼……

 

 

「あぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ……可奈子、かなっ、アァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!」
なんで? なんで? なんで!!?
どうして可奈子が死んでるんだッ!!?
どうして!?
どうしてッ!?
どうしてッッ!!?

 

「ァァァ……ぁっ、終わっ、た…………何も、かも……」
終わった。
この世界も終わりだ。
俺の望んだ世界は、可奈子の死を以て幕を下ろす。
幕を? 何でそんな事を思うんだ? まぁ、どうでも良いや。こんな世界。可奈子の居ない世界に意味なんて無いし。
ここに在るのは、静に変わって生を失った最愛の身体だけ。
「か、な……」
ガクリと両膝を着き、両手を着き、わんわんと子供みたいに泣いた。
可奈子の赤い血液で、俺の身体も汚れて行く。
「かっな……」
涙を指で拭った。
顔も滑り(ぬめり)と汚れた。

「死のう」

決断を。

可奈子の居ない世界で生きて行けるか?

無理だ。

なら、どうする?

このまま生きていても、生きているだけ。身体が動いているだけだ。心は可奈子と居っしょに死んだ。

なら?

共に墮ちるさ。二人で落ちる地獄なら、きっと恐くない。

「待っててくれよ可奈子……今度こそ守るから」
そうと決まれば早かった。
血乾く廊下で正座をし、膝の上に可奈子の頭部を乗せる。
「膝枕、で良いだろ可奈子? 抱き合って、とかさ。ガラじゃないって言うか……悲劇の主人公っぽくてさ。だからこれで、な?」
後悔無い筈は無い。どうしてこんな事になったのか、真相を確かめたい。ただ、そんな気力が無いだけ。
「みんな、本当にゴメン」
みんな……みんな? 『みんな』って、誰だ?
「みん、な?」
数間で考えてみるが、そんな奴等は分からない。
「どうでも……」
そして、死に際の俺には関係無い事だなぁと思いながら、『転がる凶器の柄』に右手を伸ばした。

 

  〜 OtherSide 3日目〜

 

 3

 

 

 冷たい風が突き抜けて、ひらひらと雪が舞い落ちる。そんな世界。

そんな世界でも、ライトメアの姿は、確かに肉眼で見えていた。

街の中央。
有料公園の中央。
白きエンペラーが悠然と佇む。
……もう、繰り返させない。何もかもを、今日で終わらせる!
意気込みは十分。気合いも十分。ハイなテンションモアベター。
イケる、イケる、イケる!!
腹部の負傷を差し引いても普段よりずっと調子が良い。
交換神経が最大まで活性化し、冷風を切る頬の感触だけで『イケる』位にアドレナリンが出てる。
血管は収縮して血液の流出を押さえ、瞳孔は拡大して敵を捕捉。

「カッ、やってやる!! 殺ってやるわライトメアッ!!」

公園の入口過ぎに着地。次の一歩でライトメアの数歩前まで飛べるだろう。
だが叶わない。
瞬間、着地した瞬間。
「ぐぎっ!?」
情けない苦声が漏れ、左腹部で激痛が爆ぜる。
地に足を着けた僅かな瞬間。その僅かな瞬間に、『黒き鬼の爪』は、私の身体へと届いていた。
「ふぅッ……」
即座に身体を右へ飛ばす。
「つうッ!!」
このままでは『マズイ』と、この不意打ちを受け切れば『死ぬ』と、力の抜ける方向に跳べと、身体が頭脳に呼び掛けて反応する。
同方向に駆けるスピードで競り勝ち、鬼爪が鮮血を散らせて抜け出、空中で身体を捻って鬼に向き変え、
「コレを外す!?」
鬼の苦汁表情を覗く。
繋げる動作で後方滑走へと持って行き、『黒き鬼爪の女』を睨み捕らえる。
「流石ね浦島のお嬢ちゃん。不意を討とうなんて考えなかったけど、『お返し』よ」
戯言で姿を見せたのは、白と番(つがい)に成ろう黒き異端女。
「何匹も何匹も悪って奴は、倒しても倒しても限りが無い……」
有りっ丈の皮肉を込めて、台詞と血唾を吐き捨てる。
「まぁ、その悪を斬る事が浦島の神髄なれば」
女は腰位置まで来る程の長髪ブルーブラックで、全身を黒のライダースーツで包む。
「あら、悪だなんて酷い。まぁ、フフッ……それこそ悪の神髄なれば」
そして『巨腕』。身体の中、右腕だけが倍近くまで膨張し、肘の延長線に螺旋角を生やす。
「『死んだ筈の貴女』が私の前に現れるなんて、どんな因果か理解出来ないけど……」
二桁メートルの地面滑走からピタリと止まり、右手示指で女鬼を指す。
「例え蘇ったとしても怨恨は消えず……故。浦島を継ぎて、怨恨節操のツルギと成りて、貴様と因縁を斬り捨てる!!」
そのまま指を空に向け滑らせ、天に帰れ、と意志を告げる。
続けて体変。両足を肩幅まで広げ、両手は身体正中線上で右手を眼前、左手を股前で五指を開いて牙の容姿を真似。これこそカウンターに重点を置く『戦神四型(せんしんしけい)』の一つ、『森羅万象』の構え。
「お嬢……相も変わらずのビッグマウスね」
倒すべきは白と黒。各個撃破は上等手段。と考えるのが普通だが、むしろ戦いの定石は危険。一人づつ潰そうと考えるのは危険なのだ。この死合いで狙うのは、僅かな隙に叩き込む一撃必殺。二匹同時に沈める術(すべ)だ。
「敗者が敗北を認めず勝者を追い、勝者で在る私は再び返り討ちにする。あの時は油断したなんて、言い訳にもならない」
私の挑発台詞に、鬼が分り易い苛立ちの表情。
「言うわね?」
これも布石。饒舌で語りながら心理戦を仕掛ける。
はっきり言って苦手な分野だが、有効な相手には使う。その先に初めて『勝率』が見えて来るから。勝率は3%……有れば良いか? って違う! そうじゃないのよ!! 
そうじゃない。『3%は高い』。今が最高値。ここでしくじれば、仮に私が生き残ったとしても、生涯3%越えは無い。勝率はどんどん低下する。だから大切なのは今、この時、この瞬間。3%を狙い叩ける実力と運が、この私に有るかと言う事。
「お嬢……」
女鬼の手爪は指の長さを越え、右肘部のライダースーツは破れ、上肢長の『角』が肘から伸びて存在を示す。
「死ぬ、わよ?」
言い争いは無意味と悟り、深い溜め息を吐いて『人外の右腕』を正面に構える。
「浦島八卦は不退転……」

閉目。

刮目。

そんな事は、計るまでもなく分かっていた。
「悪には悪の正義が有るんでしょ? なら、力尽くで推し通れ!!」
五年前の悪夢。この女鬼一人に、浦島の家系は潰され捲る。家族も従兄弟も親戚も、はるかさんを守ろうとして瀬田も殺された。はるかさんだって半死で半壊。右目を失い、左腕を失い、伴侶を失った。活力を失い、表情を失い、言葉を失い、髪の色素は薄くなり、いずれ訪れる確かな死を、ベットの上で毎日待ち。最前線で戦い続けた勇騎は、日々を幽鬼と変わり果てて過ごす。
その戦いで生き残ったのは……お祖母ちゃんと私。お兄ちゃんも新婚旅行に行ってて助かった……されど三人。浦島で生き残ったのは、たった三人だけ。
「実力は白昼の筈よ浦島嬢? 今度は油断しない。足の腱を裂き……死ぬまで愛玩として飼ったげる!!」
でも、それでも!
この女は、私が、確実に斬り殺した筈だ!!
刹那の虚を突き、背後から斬った。
あの時は『そうする』しか無かったから。
蟻と鼠、鼠と猫、猫と虎、虎とティラノザウルス、ティラノザウルスと核ミサイル。
それ位に『力』では天地程の差が有ったから。
卑劣と知りながら、刹那の不意を討った。
「それは無理な話ですね『ナイトメア』。そっちのライトメア共々、私の刃で斬り伏せる!!」

……あれから四年。実力は縮まっただろうか?

「武器も無しで、どう斬り伏せると言うのよ?」

刃なら、在る。
「我が刃は信念……」
呼吸法で丹田に大気を集め、練気として全身に渡らせ流す。
「如何な邪悪も打ち砕く、唯一無二の剣(つるぎ)也!!」
敗北を喫する時は刃折れる時。私の心が負ける時だ。
されど鋼。刃は鋼。そう易々と折れたりはしない!
「だってよ『姉さん』。僕は昨日遊んだけど、人間にしたらけっこう出来るよ?」
ダラダラと歩いて来たライトメアはダラダラと語り、ナイトメアの左に立ってダラダラと構える。
「『遊んでた』んでしょ?」

「当然。でもまっ、『この世界のカラクリ』を解かす訳にもいかないからな。ここで殺してしまおう」
白が黒と左右対象を取り、風雷の構えを成す。
……遊び、か? 言って呉れるわね。こっちは一撃捌く度に腕が痺れてたんですけど。
「折角だし、久々に全力を出して見ましょうかライト?」
目線だけをスライドさせて黒が問い、
「応ッ!! 浦島可奈子……お前の先代は僕の期待を裏切った。僕は満足してないんだから、しっかり……引き継げよ?」
白が応える。
引き継ぐ、因縁。
発端なんて分らない。
分るのは、お祖母ちゃんとライトメアが六十年前に戦ったと言う事実だけ。
そして数日前、お祖母ちゃんがライトメアに殺されたと言う真実だけ。
この『黒と白の姉弟』に、お兄ちゃんと私以外の浦島は皆殺されたのだ。

「我は、光と機物の神ライトメア。最後の勤めだ、見事果たせ……はぁぁッ!!」

――――――――ッッ!!!

大気の流変を肌で感じる。
豪々(ごうごう)と白黒を中心に激しく渦を巻く。
「我は、闇と万物の神ナイトメア。我等が二神は、貴女を敵と認め、死力を尽す事を誓いましょう……はぁぁッ!!」

――――――――ッッ!!!

真昼の月を頭上に背負い、キャパシティーを越える暴力が公園を震わせる。
挑発は効果無し……みたいね? 打てる手は打ちたいけど、もう遅い、か?

「機神ッ!」「鬼神ッ!」
同発音の言葉を重ね、

「「降ッ臨ッッ!!!」」
渦巻く大気を喰らい掻き消す。
一瞬にして白黒の光が視界を包み、世界の全てをセピアに幻視させる。
「くぅッ!?」
否、幻視成らず。世界を見せる光の三原色が、白と黒に拒絶されデリート。
色彩は死に、色相は鎖を断ち切られる様に息衝く。
「命を賭せ、浦島可奈子。一分一秒でも多く、『俺の』惰性を解消しろ!」
されど烈の瞬き。セピアは吹き飛び、光と色の三原色が再現される。
「お嬢……お祈りは済ませなて置きなさい。目の前に折角、二人も神が居るんだから」
ならば再び。白と黒は世界を纏う。
「そう、ね」
感じる、感じる、感じる。元素(マナ)の鼓動を、元素の胎動を!
辺りの元素が喜び狂い、マスターの現界に歓喜してる。
「Go To Hell。とでも、言えば良いかしら?」
口から出るのはセメテもの強言。虚しさが込み上げるだけ。
……嗚呼。
こんな『神(ペテン師)』じゃなくて、本当の『神様(救世神)』。
嗚呼、ああ神様どうか、愚かで我儘な私を救って下さい。
「I wish……」
そして願わくば、私達兄妹に祝福を。儚くても素晴らしき未来を!!

「祈りは済んだか浦島の末裔?」

運命を切り開け、開拓しろ! 奴等は『力』有るが故に無防備。必ず倒せる。
自信を持て浦島可奈子。
「ええ……1ラウンド3分以内で、そこの二人を軽くKO出来ます様に、ってね。きっと叶うわ」
呼吸を整えろ、初動の時は近い。恐怖を払う為の強がりも、やはり必要だ。得意じゃないけど、自分のペースに持って行ける。
「だってよ姉さん。どうする?」
同タイミングで攻めて来れば、二人に纏めてカウンターを合わせ、一手目で落とす。
私が生き残り、白と黒が死ぬ。それがベスト。
刺し違えるのが次。
最悪でも白、私が死ぬとしても白は殺す。
お兄ちゃんだけは『この世界』から出さないと駄目だ。
「無論……」
黒の口元が吊り上り、殺気は尚も膨れ上がる。
白と黒、来るか!?

 

「却下よッ!!」

 

その台詞が合図。殺気を暴力に変換する代言句。
風雷の型が崩れ、黒が先行して迫る。アスファルトを蹴り飛ばし、自らを超速の弾丸と化す。
「ちッ!!」
惚ける私は舌を打つ。
戦神四型の構えは、最初から裏目が決まっていた。
森羅万象は一撃のカウンターを放つ為の構え。一撃のカウンターを放つ為の森羅万象。敵の攻撃に合わせ、必殺を叩き込む型、そこに終始する。
何からも連携は取れず、何にも繋げられない。必殺なのだから次は必要無いのだ。幾ら隙が出来ようが関係ない。『不測』なんて起こり得ないんだから。
「こおぉぉぉぉぉッ!!」
瞬時に構えを解き、両掌へと気を集めて胸前に置く。
「お嬢ッ! 初手詰みよッ!!」
コンマ単位の重なる間で、『変化したナイトメア』が『人間の左腕』を突き振るう。
「ヌルいわナイトメアッ!!」
単純で直線的な左ストレート。私の顔を標的に放たれたフェイント一手。
これを受け切れば死ぬし、捌いても本命の右腕が飛んで来る。
なら、私が現状で取るべきベストセレクトは……
「反応も出来ない木偶が!!」
黒の左拳を包む様に両掌で、そして接触の瞬時。その瞬間に、
「疾ッ!」
自身の身体を後ろに飛ばす、一連で行うダメージ吸収。接触は許可するが、インパクトは許可しない。
「ッッ!? っ……やるぅ」
不意打たれた時と同じ。僅かな距離の追撃はさせるも、女鬼が先に足を着き、そこから二桁メートルも多く私は下がる。
「疾ィィッ!!」
だが終わらない。
体は止まるが間髪置かず、三度目の跳躍、三度目の後方地面滑走。
「ぐっ……白と黒。なるほど、そう言う事?」
自販機に背部を強打して止まり、白と黒を視界に入れて立ち構える。
「随分と面倒な戦術で来るわね、と」
理解。
理解ね。
理解したわ。
つまり……
捉えろ! 常に二匹を同時に!!
白が迫れば黒を注意し、黒が迫れば白を警戒する。しなければならない。それを怠るはタブー。死を意味する。
「流石は末裔。勘が良いな……」
三度目の跳躍をした場所。そこにライトメアが立居。
巨大な剣を左手だけで振り下ろし、その風圧でアスファルトの地面を削る。
……避け切れてない。背中に打ち身を作る覚悟で跳んで無ければ、完全にアウトだった。
そして『あの武器』。禍々しさなら『妖刀ひな』を超えるか?
「よしよし、気を抜くなよ浦島可奈子。どんどん加速して行くぞ」
白の世界で白の支配者が持つ白の剣。いや、白と呼ぶには余りにもメタリックでシルバー。
幾分の柄と、自らの身長を越そうかと言う両刃長剣。刀身が機械的に輝き、払拭する異様がそれを凌ぐ。
「『暴虐と残虐の機光皇子』(ハイヒドゥン・リィバスター)。浦島の血筋を葬る剣だ、覚えて置け」
言い退け、重々しさが伝わる切っ先を私へと向ける。
「あらライト。もう見せちゃうの? なら私も、魅せちゃおうかしら?」
完結してない。異様は感染する。白の更に遠く、『蝙蝠(こうもり)に似せた翼を生やした』女鬼にも。
「はっ……まだ、か?」
確率はまだ下降途中。
まだ分が悪くなると言うのか?
女鬼は体の前面を左前にセットし、空に掲げた左掌に黒の異様を『召槍』する。
「我が手中で啼き震えるは、焦がれを喰らう盲目龍!!」

この空の青も、
この吐息の白も、
この血液の赤も、
狂おしい程の『黒』で凌駕する。
堕海の闇(あお)も、
無明の薄(しろ)も、
命奪の朱(あか)も、
全愛を喰らう凶(くろ)が支配する。

「我が名より出よ、『闇夜を愛する色滅龍』(デスベェル・ガンツァート)!!!」

ナイトメアの呼び掛けに応じ、
原子構築(サラサラと)、
分子構築(形作り)、
粒子構築(この物質界に)、
槍に成る(顕界する)。
鬼の左掌に『現れ』、真一文字に黒を見せ、
私を喰らう為に、
命を喰らう為に、
二本目の角と成りて一槍に昇華。
白の剣を余裕で超す全長黒槍。
「絶望的、って……思わないかなぁ……ねぇ、お嬢?」
解るわよそれくらい。お前等が込み上げる笑いを必死で噛み殺してるのも解る。
童子切さえ有れば女鬼の方は殺れたのに、あの判断は早計過ぎた?
「……カッ」
否、だ。過ぎたるを悔やむな。お兄ちゃんを助けるのが優先目的だった筈。
なら、全力で飛ばせ浦島可奈子!!
変わるかも知れない未来を、両手で掴み取れ!!

「はんっ……ぶった切れろぉぉぉッッ!!」

白の咆哮。
手も届きそうな至近距離に現れ、私の胴を分断せんとする白の薙払い。
「疾ィィィィッッ!!」
それを『引く』では無く、『低く』踏み込んで躱す。
剣の軌道が頭上を通過し、鈍い金属音を鳴らしながら代理の自販機を分断して行く。
「なッ!? この動きは日向!!?」
取った。完璧。
反撃不能の零距離、完全密着。左掌にハイテンションな気を集め、ここから繰り出す私の攻撃は、ライトメアを殺れるだろう私が保持する唯一の術。そしてこの上無く……
「天に帰れライトメアッ!!」

一方的!!

 

 

 

 

 

 

……………だった筈の過程。

 

既に身体は満身創痍。

「えっ? えっ?」
私は間抜けな声を漏らし、この結果を理解出来ない。
「お嬢ごめんなさいね。『魔法』……使っちゃったわ」
ナイトメアの声に反応して見上げる。
見上げる?
「助かったよ姉さん。何かヤバ気な攻撃だったし」
私は地面にお尻を着き、巨木を背に当て、黒と白の姉弟を見上げる。
必殺を放つ筈だった左手は動かない。
「痛、いよ……」
私の頭より上の位置で、黒の槍に巨木ごと貫かれていた。
掌に開けられた穴。
ヌルヌルと血液が腕を、幹を伝い、私の顔を汚して流れる。
あ、早く抜かなきゃ……
「う、うう」
痛い。このままじゃ死んじゃう!
槍の柄に右手で掴み、引き抜こうと力を込めるが、
「だーめーよ!!」
グチャグチャと音を立てて槍を捩じられ、激痛で力が入らない。
「ひぎっ!?」
口は閉じれず、魚の様に酸素を求める。ガラクタ以下の無様な私。
こんな傷だらけの身体じゃ、生き残っても愛して貰えない。
「悪いな浦島可奈子……俺達も一応は神だからさ。魔法なら使えるんだよ。それを使わないで戦う事が楽しみだったんだが、貴様が『こう』なっては無意味か」
私はコイツ等の能力を見誤っていた。
自然に、気になどせずにスルーしていたが。火花をバンバン散らせるだけが魔法じゃないんだ。武器をどこからか取り出したのだって、魔法と呼べないだろうか?
「一瞬で楽にしてやろう浦島可奈子。これが浦島と言う血筋の……」
ライトメアは私の正面に立ち、私の運命を終わらせる白機剣を振り上げる。
「ああ……誰か……」
それを境に世界が二つに分かれ、ガキンと風切る音が響く。
「幕だ!!」

続く風音で剣が打ち落とされ、
私は眼を瞑(つむ)り、視界を黒く染める。

 

だれに乞いても叶えられない、兄の無事を祈りながら。

 

 

 

 続く。

 Next LightMareDays

 

 

 後書き
携帯の要領の都合で今回でも終わりませんでした。
次で終わります。

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